古くから炭鉱の町として知られる北海道釧路市では、11.2万kWの石炭・バイオマス混焼「釧路火力発電所」建設計画が進められています。すでに北海道環境影響評価条例による環境アセスメントが完了し、2019年中の稼働開始に向けて建設工事の真っただ中にあります。
事業を実施するのは、㈱釧路火力発電所。石炭採掘を行う地元企業の釧路コールマイン(株)のほか、電力インフラの投融資を手がける㈱IDIインフラストラクチャーズなど計4社が出資する特定目的会社です。IDIインフラストラクチャーズは東京都が15億円出資している官民連携ファンドであり、同社は福岡県北九州市における石炭火力発電所・響灘火力発電所(11.2万kW)に対しても総事業費の10%に当たる30億円を出資しています。
大気汚染物質についても注目するべきでしょう。釧路火力発電所の環境アセスメントでは、硫黄酸化物(SOx)の排出量は毎時44m3以下、窒素酸化物は毎時44m3以下、ばいじんは毎時13kg以下とされています。地域住民の強い反対によって裁判にまで発展した仙台パワーステーション(宮城県仙台市、11.2万kW、石炭専焼)は、それぞれ毎時33.8 m3以下、40 m3以下、20kgとされ、(NPO法人 気候ネットワークの調査による)SOxとNOxは同規模の石炭専焼である仙台パワーステーションの排出量を上回る可能性を含んでいます。
これまで釧路を支えてきた石炭産業ですが、この炭鉱の町においても石炭火力発電への反対の声があります。環境アセスメントでは、市民からの意見として大気汚染やCO2排出への懸念が示され、建設地が住宅に隣接していることや住民への周知が徹底されていない問題が指摘されています。市が開催した説明会には270名の参加があったとも報じられています。同じ思いを抱える市民が協力しあい、公聴会での口述や事業者および釧路市への署名提出をしてきましたが、事業者はそうした声を汲むことなく2017年12月15日に着工に至りました。
2018年7月には、経済産業省が小規模火力発電所の新設を事実上禁止する方針が報じられましたが、すでに着工している釧路火力発電所には効果がおよびません。稼働開始を阻止するには、事業者に対して市民の懸念を訴え、中止を求めるうねりを大きくしていくことが必要です。事業者はそうした市民の声に耳を傾け、脱炭素化に向かう潮流を踏まえ、計画を中止するべきです。
参考リンク
釧路火力発電所 計画概要(リンク)
釧路火力発電所建設事業(北海道 環境影響評価のウェブサイト)
参考報道
東京都が出資したファンドが石炭火力発電所に投融資 公表までに約3年半!(2018年5月18日記事)
建設市計画、釧路市が説明会 /北海道(毎日新聞 2017年8月31日)
石炭火力の新設規制 経産省方針、小型は事実上禁止(日本経済新聞 2018年7月26日)