1月8日、株式会社JERAの子会社である株式会社常陸那珂ジェネレーションが開発を進めてきた常陸那珂共同火力発電所1号機(65万kW、超々臨界圧発電方式(USC))の営業運転が開始 されました。この運転開始は以下の点で問題で、両社には真摯に向き合って欲しいと思います。
1) 高効率でも大量のCO2を排出
環境影響評価準備書に係る審査書 の記載によれば、同機は年間約368万トンのCO2を排出します。高効率であっても排出するCO2は決して少なくなく、発電所が稼働している限り排出し続けるので、今後、数十年にわたり排出が固定化されしてしまうことになります。
2) パリ協定に不整合
パリ協定の1.5℃目標を達成させるためには、2020年以降いかなる石炭火力発電所の新規稼働も認められないとされています。世界で石炭火力発電所の廃止が進む中での新規の石炭火力発電所の運転開始は大いに非難されることです。
3) 日本政府の2050年温室効果ガス排出実質ゼロ宣言に逆行
石炭政策の転換を表明しながら、具体的なフェーズアウト計画を示すことなく新規発電所を次々に運転開始している状況は、国際社会における日本の気候変動対策の本気度に対する疑いを招くものとなるでしょう。
4) 親会社JERAの「JERAゼロエミッション2050」との関係性が不明確
JERAは昨年10月に2050年時点で国内外の同社事業から排出されるCO2を実質ゼロとすることを目指す「JERAゼロエミッション2050」を表明しており、その直後に運転を開始したことになります。子会社は対象外ということでしょうか。本気でゼロエミッションを目指すのであれば、廃止を含めた個別のゼロエミッション計画を早急に策定・提示すべきではないでしょうか。
5) 地元 東海村のゼロカーボンシティ達成にとって大きな負担
発電所のある茨城県那珂郡東海村は、2050年二酸化炭素排出実質ゼロ(ゼロカーボンシティ宣言)を表明しています(2020年7月 )。東海村にはJERAが運営する既存の大規模火力発電所 (常陸那珂1号機と同2号機、各100万kW)があり、新たな発電所が加わったことで地元のゼロカーボン目標への達成を確実に困難なものにしてしまうでしょう。
参照URL
常陸那珂共同火力発電所1号機の営業運転開始について
常陸那珂ジェネレーション プレスリリース
JERAプレスリリース