WWFジャパンは、2011年から6回にわたって発表してきた「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ」への提言を改定し、2050年ゼロに向けた提言を新たに発表しました。 2017 年版を発表以降、エネルギーを取り巻く環境は大きく変化し、他国に出遅れていた日本でも菅首相が2050年脱炭素社会を宣言したことで、脱炭素社会に向けた流れが加速しています。
WWFジャパンのシナリオは最新の現状を反映させ、2050年脱炭素を可能にするためには2030年にどうあるべきかを示しており、2030年までに石炭火力発電を全廃することは可能だとしています。
提言のポイント
石炭火力発電を2030年までに全廃止することは可能
石炭火力を順次廃止しても、既設ガス火力の稼働率(現状35~50%)を引き上げる(60~70%程度)ことで穴埋めは可能、新設・増設する必要はない
産業構造の変革と自然エネルギー(風力・太陽光中心)の電力に対する比率を引き上げることで脱炭素は可能
経済成長を前提としても省エネによりエネルギー需要を削減することが可能
原発は稼働30年で廃止とすれば、2030年には約2%、2038年に全廃
提言のエネルギーミックスが実現すれば、エネルギー起源CO2排出量は2030年に2013年比49%削減(GHGでは45%)、2040年に70%削減(同68%)となり、2050年にはゼロ(同ゼロ)とすることが可能
WWFジャパンでは、シナリオを実現するためのコストも算定しています。年間の総投資額は、2050年までの30年間の平均GDPに対し、1.1%程度。その他費用を入れると、GDP比でおよそ1~2%になるものと想定しています。電力価格も一貫して減少し、2030年には約11.8円/kWh、2050年には7.9円/kWhまで低下する見込みです(2020年11.6円/kWhの想定)。自然エネルギーを中心とする社会では、化石燃料への依存を続ける場合と比べ、化石燃料費用が不要となり、価格優位性が高いことが一目瞭然です。
リンク
46%温室効果ガス削減目標(2030年)を実現する 「2030年エネルギーミックス」提案 ~2050年100%自然エネルギーで賄う社会に向けて~(ht
過去の発表資料
「脱炭素社会」に向けた長期シナリオ(https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/1576.html#re04)
作成・発行:WWFジャパン(システム技術研究所 委託研究)
更新:2021年5月28日