2020年11月1日に営業運転を開始する予定だった釧路市に計画されている石炭火力発電所が、11月末時点でも本格稼働していません。釧路火力発電所の事業者であるIDIインフラストラクチャーズ内でも、一時的に同社との連絡が一切とれなくなったり、ホームページが停止したりという事態が起きていました。10月には、急遽社長が大和証券出身の荒木秀輝氏に交代するという人事異動が急遽発表されるなど、事業者として不安定な状況であったことが漏れ聞こえていました。
また、釧路火力発電所を考える会(以下、「考える会」)によれば、周辺住民からは、試運転中の音や振動がひどく夜も眠れない、集積場から発電所に石炭を運ぶ10トントラックの横行時の騒音がひどい、といった苦情が市役所や発電所側に相次いでいるとのことです。これらのこと受け、考える会では、大株主である大和証券および主要な株主であるみずほフィナンシャルグループおよびみずほ証券に対して質問書を送付しました。釧路火力発電所の住民トラブルや脱石炭に向かう社会動向との整合などについて問い、その回答を待つとしています。
釧路火力発電所は、112MW(11.2万kW)という規模で、いわゆる国の環境アセス逃れ*の最後の計画で、発電技術規模はSub-C(亜臨界圧)を採用した、いわゆる”非効率石炭火力発電”設備です。今後の運転開始時期についての情報は公表されていませんが、気候危機対策の観点からも、住民への騒音・振動公害の観点からも、本格稼働する前に再考し、中止することが求められています。
*国の環境影響評価法(環境アセス法)では、11.25万kW以上の火力発電所が環境アセスの対象として義務付けられており、その対象規模をギリギリ下回る設備で計画を進めた石炭火力発電所が2015年以上多数浮上しました。