【ニュース】フィンランド最後の石炭火力発電所、2027年に閉鎖へ


2026年6月24日、フィンランド大手のエネルギー企業であるFortum社は、メリ・ポリ(Meri-Pori)石炭火力発電所(565MW)を2027年3月1日をもって閉鎖し、解体することを発表しました。Fortum社とメリ・ポリ発電所が位置するポリ市は、同発電所が持つ既存の送電網接続を有効活用し、同地域をクリーントランジション工業ゾーンへと発展させる計画で合意しています。

メリ・ポリ発電所は、1994年に稼働を開始。2024年3月末に商業運転を終了した後、2024年4月からは電力システムに深刻な混乱や緊急事態が生じた場合にのみ稼働する専用施設としてフィンランド国家緊急供給庁(NESA)の緊急用予備電源となっていました。この2年間、同発電所は試験運転を除いて発電を行っておらず、商業目的での再利用に必要な改修も行われていないため、商業的な収益性を見込めない状態にありました。緊急用に石炭は調達されていたものの、同発電所はもはや安定供給を確保するための適切な手段とは見なされなくなっていました。2026年末にNESAとの契約が終了した後、2027年1月と2月の冬季期間のみ電力市場に再接続し、その後3月1日に完全に閉鎖される予定です。

脱石炭法と企業戦略がもたらす脱石炭の加速

フィンランドは冬が長く暖房需要が高いため、一人当たりの総エネルギー消費量が世界で最も高い国の一つです。そのためNESAは現在、石炭とは異なる形態で予備の発電容量を確保する準備を進めています。NESAは代替エネルギー容量に関する具体的なアプローチをまだ発表していませんが、同庁の「エネルギー2030」プログラムでは、化石燃料に依存しない社会であってもエネルギーの安定供給を保証するソリューションを開発する必要性が明記されています。これは、石炭火力のバックアップ電源がバイオ燃料、原子力、そして風力発電へと置き換わることを意味しています。

緊急事態への備えとは別に、国内の風力発電は目覚ましい勢いで成長を遂げており、2025年にはフィンランドの総発電量に占める割合が27.9%に達しました。同時にFortum社は、2027年末までに石炭を用いたエネルギー生産から完全に撤退するという自社戦略を推し進めており、すでに同社の発電量の99%は再生可能エネルギーまたは原子力によって賄われています。

これらの決定は、フィンランドの電力および熱生産における長年の石炭利用を2029年5月1日までに終了させるために、2019年に可決された「石炭のエネルギー利用の禁止に関する法律」の方針とも合致するものです。実際には、Fortum社以外のエネルギー企業2社がフィンランド国内の残りの石炭火力発電所を閉鎖した2025年春の時点で、国内のエネルギー生産における石炭利用は事実上終了していました。

サリ・ムルタラ気候・環境大臣は、この法律が「社会の方向性を強く示すシグナルとなった」と評価した上で、2029年の期限よりも4年早く石炭利用を終了できた背景には、「EU排出量取引制度(EU-ETS)、国の投資支援、2017年の国際的な『脱石炭連盟(PPCA)』創設メンバーとしてのフィンランドの役割、そして気候目標を達成しようとするエネルギー企業の野心があった」と言及しています。大臣のこのコメントは、企業に対して気候変動対策を講じる法的義務を課すことの重要性を明確に示すと同時に、民間セクターが野心的な目標を掲げることの潜在的な推進力を浮き彫りにしています。

Fortum社の気候目標が「Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)」に準拠していたことも脱石炭への移行を後押ししました。SBTiは、企業や金融機関が科学的根拠に基づいた気候行動を起こすよう支援する国際的なイニシアチブです。SBTiに参加することは、電力会社が自らのフェーズアウト(段階的廃止)のタイムラインを科学的根拠に基づき、2040年までのネットゼロ達成に向けて実効性のある対策を担保するための重要な手段のひとつとなっています。

既存インフラからクリーン産業への転換

ポリ市は、現在メリ・ポリ石炭火力発電所が位置するタフコルオト(Tahkoluoto)地区について、クリーントランジション工業ゾーンとしての高いポテンシャルを見出しています。この地区の強みは、既存のエネルギーインフラが整っていること、フィンランド沿岸部で最も水深の深い港の一つに近接していること、そして高い電力需要を伴う大規模プロジェクトを受け入れる余地がある点です。今後この地区は、グリーン水素をベースとした合成炭化水素やアンモニア、グリーンスチールの製造、さらには蓄電池産業のバリューチェーンにおける様々な製造プロセスの拠点として発展していく可能性が高いと見られています。

予定よりも前倒しで石炭火力発電を閉鎖することは、老朽化したインフラの廃止が新たな経済的機会をもたらすという意味で、脱石炭の加速が官民双方にとっていかに有益であるかを証明しています。法のもとで着実に民間企業が主体的な脱石炭に向けた取り組みが進めることは、依然として石炭火力への依存を続ける日本のような国々において、フェーズアウトを加速させるための参考となるでしょう。

参考資料