2026年6月2日から17日まで、オーストラリア北部沖合にあるINPEXのイクシスLNGプラントで、約400人の労働者がストライキを行っていました。「オフショア・アライアンス」と「電気労働組合(ETU)」が組織したこのストライキは、オーストラリア最大級のLNGプラントの一つである同プラントの操業に支障をきたす恐れがありました。年間最大930万トンのLNGを生産するイクシスLNGプラントの生産量の約7割は日本買主向けに輸出されており、日本の輸入量の約10%を占めています。ホルムズ海峡の封鎖によりすでにLNG供給が逼迫している中、イクシスからの出荷遅延が日本のエネルギー供給の不確実性をさらに高める可能性があり、今回のストライキはサプライチェーンの混乱に対する日本の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。
| イクシスLNGプロジェクト |
| このプロジェクトの権益比率は、INPEXグループ(67.82%)、トタール社(26%)、およびCPC社(CPC Corporation Taiwan)(2.625%)、 大阪ガス(1.2%)、関西電力(1.2%)、JERA(0.735%)、東邦ガス(0.42%)となっている。 2018年にガス生産を開始し、同年にLNGの出荷を開始。年間最大930万トンのLNGを生産している。海底、洋上、パイプライン、陸上作業に至る開発・生産の全工程を一貫管理されている、世界でも数少ないプロジェクトの一つである。 生産されるLNGの約7割は日本へ輸出されているが、日本から東南アジア諸国へのLNGの再販は国際的にも問題視されている。INPEXは、同地域での探査活動を拡大するとともに、特定の鉱区においては2030年頃から二酸化炭素回収・貯留(CCS)を導入することを目指し、評価を進めている。 |

出典:INPEX、イクシスLNG
4月、従業員が新たな労働協定に賛成票を投じたものの、INPEXが賃金や雇用保障に関する労働者の要求条件を受け入れなかったことから、ストライキの可能性が浮上しました。5月18日、労働組合はINPEXに対し、ストライキ実施を正式に通告するとともに、INPEXが交渉を再開すれば交渉の席に戻る用意があることを表明しました。INPEXは労働組合との再交渉を行う代わりに、オーストラリア連邦政府の雇用法である2009年フェアワーク法(Fair Work Act 2009)に基づき、ストライキ中止命令を求める申請を提出しました。同社は、プラントでの操業遅延がオーストラリア経済に重大な損害を与え、国内での停電のリスクをもたらしていると主張しました。しかし、Fair Work Commission(FWC、職場の権利に関する審判機関)はストライキ中止の申請を却下し、6月14日に公表された「決定理由」文書の中で、却下の背景を詳述しました。
回答の中で、FWCは、2026年6月のINPEXによるLNG生産の価値を1日あたり1,500万〜2,200万ドルと推計しています。しかしFWCは、イクシス・プラントにおける数日から数週間の短期的な生産中断はオーストラリア経済全体に重大な損害を与えるというINPEXの主張を退けました。この決定は、イクシスが国際貿易に重点を置いていることに起因していると考えられ、同プラントのLNGの70%は日本へ輸出されていることを踏まえれば、生産中断による損失は、オーストラリア国民ではなく、主にINPEX自身が輸出収入の減少という形で被ることになるからです。
6月17日、労働組合は労働条件に関する要求を巡ってINPEXと合意に至り、7月6日まで予定していたストライキを終結させると発表しました。ストライキの長期化によってLNGの出荷遅延が生じていたことに加え、貯蔵容量の上限に達するまであと数日のところまで迫っていたことから判断したと見られます。貯蔵容量が上限に達した場合には、沖合での減産を余儀なくされ、技術的な問題や操業停止のリスクを伴う事態となっていました。
ストライキが予定よりも早く終結したため、最終的に日本のLNG輸入に目立った遅れが生じる事態は避けられました。しかし、輸入量の大きな供給元で発生する突発的な供給途絶リスクは、化石燃料に依存する日本のエネルギー供給の脆弱性を改めて浮き彫りにしています。中東危機やホルムズ海峡の封鎖を受けて、日本政府はすでに非効率な石炭火力発電に対する規制を一時的に解除しています。しかし、多くの国が最近のサプライチェーンの混乱を再生可能エネルギーの拡大を推進する好機と捉えている中、化石燃料への依存(または火力発電体制)を維持しようとする日本の戦略は非現実的であると言わざるを得ません。このようなエネルギー危機が続くことは、脱炭素化の目標を達成するだけでなく、国内でより安定したエネルギー供給を確保するためにも、日本が化石燃料からの脱却を進める必要性を浮き彫りにしています。
参考資料
Fair Work Commission, Deputy President Easton, Response to Application by Inpex (2026年6月14日)
Fair Work Commission, INPEX Timor Sea Oil & Gas Project
INPEX, Ichthys LNG
INPEX, The Ichthys LNG Project and nearby exploration blocks
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