気候変動や脱石炭火力といったテーマにとって、2025年はどんな年だったでしょうか。
Japan Beyond Coalは、2025年の世界の時勢を踏まえつつ、約30本のニュース、13本のレポート紹介記事を掲載しました。
今回は、その中でよく読まれた記事を5本、ピックアップしてお伝えしたいと思います。
第5位
【ニュース】大手電力会社のやりたい放題 高コストのリスク丸抱え 長期脱炭素電源オークション見直し案(2025年6月30日)
「脱炭素電源」の新規投資を促すために創設された「長期脱炭素電源オークション」。しかしその実態は、LNG火力の新設や、すでに建っている原発の安全対策など、「脱炭素」に資するとは到底いえない電源に長期的に資金を提供する一方で、本来であれば脱炭素電源として優先すべき再生可能エネルギーは落札できず、資金がまわらない仕組みとなっています。
2025年度の第3回オークションに向けた見直しが行われる中、さらなる改悪が提案されました。水素・アンモニア・CO2回収貯留といった、火力を延命させる非常にコストの高い措置に対して、「落札上限価格を2倍に吊り上げる」「燃料費などの可変費を算入できる」「落札価格も後から補正できる」といった手厚い補助をつけようとしています。
審議会での大手電力の発言や要望に近い形で決まっていく、長期脱炭素電源オークション。国民への負担増は免れませんが、このままで本当にいいのでしょうか。
長期脱炭素電源オークションについては、問題点をわかりやすく解説したファクトシートを新たに公開しました。こちらもご覧ください。
▶ファクトシート「長期脱炭素電源オークション」
第4位
【レポート】世界の平均気温が初めて産業革命前より1.5℃以上高い気温に(2025年1月30日)
2024年は、世界の平均気温が初めて産業革命前より1.5℃を超えた年となりました。この記事では、世界気象機関(WMO)やコペルニクス気候変動サービス(C3S)といった気象機関の報告をまとめました。これらの報告は、速やかな方向転換が必要であることを示しています。
WMOのセレステ・サウロ事務局長は、「単年で1.5℃を超えたからといって、パリ協定の長期気温目標を達成できなかったことにはならない」と希望を残しつつ、その上でわずかな気温上昇でさえも問題にするべきである、と訴えました。
第3位
【ニュース】爆発事故を起こしたJERAの武豊火力が再稼働(2025年1月9日)
JERAが所有する日本最大級の石炭火力発電所である武豊石炭火力(愛知県武豊市)は、2024年1月に火災事故を起こしました。この発電所ではCO2排出量を抑制するため、石炭に木質ペレットを17%混焼していましたが、この木質ペレットから出火し、ボイラー建屋が爆発しました。事故後、当面の間は石炭のみを燃料とするとして2025年1月から高需要期に運転を再開すると発表しました。2026年度末頃からは木質ペレット(8%)の混焼を再開するとしています。
しかし、この再稼働にあたって住民からは抗議の声が上がり、JERAは十分な住民との協議を行わないまま再稼働に踏み切りました。そもそも電力需要から見て武豊火力の再稼働は必要だったのでしょうか。この記事ではそれらの問題提起をしています。
第2位
【ニュース】二酸化炭素が房総半島を横断、首都圏CCS事業構想(2025年8月22日)
千葉県房総半島で、工場などから排出されるCO2を運ぶためにパイプラインを横断させる計画がひっそりと進められていることをご存じでしょうか。「首都圏CCS事業」—日本製鉄などの東京湾沿岸の工場地帯で排出されたCO2を、このパイプラインを通して半島を横断して運び、太平洋側の海底の地下深くに貯留する計画です。
2025年夏から、パイプラインが通るごく一部の地域の住民向けの説明会が順次開催されていますが、リスクについてはわずかな説明しかなく、「安全」だと強調されるばかりです。また、どれほどのコストがかかるのかは全く明らかにされていません。
CO2回収貯留(CCS)事業は、首都圏だけでなく、全国で進められようとしています。多くの方にこの事業について知っていただき、地元で疑問の声を事業者にぶつけてほしいと考えています。
CCSについては、こちらのファクトシートをご覧ください。
▶ファクトシート「CCS」
第1位
【ニュース】松島火力発電所の休廃止とGENESIS松島計画の今後について(2025年5月19日)
J-POWERが所有する松島石炭火力(長崎県松島)2基の動向を、Japan Beyond Coalは特に注視しています。2025年5月1日、1号機は廃止となりました。2号機は現在休止中ですが、今後「GENESIS松島」という計画に沿って、発電所の改修を経て新たに稼働させる予定となっています。
いったいこの計画はどのような内容なのでしょうか。気候変動の主要因であり、一刻も早い廃止が求められる石炭火力を、これからまた稼働させるとはどういうことでしょうか。電力需要なども踏まえながら、問題点を解説します。
なお、GENESIS松島計画の次のステップ「環境影響評価 準備書」への意見募集は近日中にも始まることが予想されます。多くの方に関心を持って頂き、一緒に反対の声をあげていければ幸いです。
今年、GENESIS松島の計画を止めるためのプラットフォーム「ACT松島」をリニューアルしました!次のステップについては、こちらでお伝えしていきます。
▶ACT松島:https://act-matsushima.jp/
GENESIS松島については、こちらのファクトシートもご覧ください。
▶ファクトシート「GENESIS松島」
上位になった5記事を見てみると、石炭火力を維持し続けようとする政府や大手電力の動向に対して、市民の関心がより高いようです。
2025年は、国際司法裁判所(ICJ)が画期的な勧告を行った年でもありました。ICJの勧告的意見では、「温室効果ガスの排出から環境を保護する義務がある」、「各国は民間事業者に対しても責任があり、化石燃料の生産や補助金を抑制しない場合には、損害を受けた国から補償などの形で賠償請求される可能性がある」などが示されています。この勧告的意見をもとにして世界中で気候訴訟は今後さらに活発化していき、技術の発達によって気候変動の影響が事業ごとに特定され、事業者はさらなる対応を求められると考えられます。
2026年はどんな年になるでしょうか?日本政府や企業の前向きな転換をお伝えできることをJapan Beyond Coal一同願っております。

