【ニュース】気候変動に関する意識調査紹介:気候政策の強化に向けて選挙に行こう!


今夏も6月から真夏日が続出し、水不足が懸念される一方で、局地的豪雨が多発するなど、我々の日々の生活は地球温暖化の影響による自然災害に脅かされています。では、日本人は気候変動対策についてどのように考えているのでしょうか?
本記事では、日本人の気候変動に関する2つの意識調査について紹介したいと思います。

2025年4月18日に発表された世界最大規模の世論調査会社イプソス株式会社の調査報告によると、気候変動に対する個人の行動が必要だと感じる日本人の割合は40%に留まり、32か国中最下位となっていました。とはいえ、この調査で日本において気候変動の影響を懸念すると回答した人は81%と、前回(2022年)より12%増加していた、つまり意識は高まっていることが明らかになっています。

もうひとつは、5月26日に発表された一般社団法人ジャパン・クライメート・アライアンス(JCA)の選挙に関する調査報告です。この調査では、現在までに、<個人の生活>において気候変動の悪影響を受けていると考える人は85.9%。さらに、この2〜3年で、個人的な生活に与える気候変動の悪影響が大きくなっていると感じる人は72.3%もいました。これらの数字がベースにあるとはいえ、次の選挙で候補者を支持する際に、<エネルギー・環境・気候変動>の内容に「関心を持つ」と回答した人が71.2%にものぼったことは興味深い結果です。まさに選挙演説が始まっている今こそ、各党の気候変動対策をチェックしてみてはいかがでしょうか。

イプソス社による調査報告「人類と気候変動レポート2025」

イプソス社は、2024年末から2025年始の約2週間に32か国の2万3745人を対象に調査を実施し、その結果を「人類と気候変動レポート2025」にまとめました。この報告書によると、「個人が今すぐ気候変動に対処する行動を取らなければ、次世代の期待を裏切ることになる」という問いに対し、同意した日本人の割合は40%に留まっており、最下位となっています。この問いに対する世界32か国の平均は64%で、最高位は同じように巨大台風などによる水害の被害を受けているフィリピンの82%でした。ところが、「自国で既に発生している気候変動の影響について、どの程度心配していますか?」との問いに対しては、懸念していると答えた日本人は81%にのぼり、しかも2022年の前回調査より12%増加していました。気候変動によるリスクが大きな国では懸念が高くなっている傾向にあり、調査対象27か国のうち18か国で懸念が高まっているとの結果が示されています。そして自国の政府に対する期待について、「自国の政府が、今すぐ気候変動対策に取り組まなければ、自国国民の期待を裏切ることになる」との問いに対しては、日本人は32カ国中最も低い同意率を示しました。この結果は、政府の気候変動対策や取り組みに対する期待が低いことを示しているとも言えます。

出典:IPSOS「人類と気候変動2025」

JCAによる選挙と気候変動に関する世論調査ー3人に1人は「気候投稿者」

有権者の気候変動に対する関心と投票意向への関連性を探るべく、2025年4月末から5月7日に、全国 5,000 人を対象に行われたインターネット世論調査の結果によると、次の選挙で気候変動に関心を持ち、「投票する」と回答した人は33.1%で、約3に人に1人が「気候投票者」であることが示されました。この調査で、近年気候変動の悪影響が大きくなっていると感じる人は72.3%。この点はイプノスの調査でも高い数字が示されていましたが、JCAの調査では、どのような影響が深刻だと思うかにまで掘り下げています。その結果は、「農作物の品質や収穫量・漁獲量の低下」(54.9%)が最も多く、次いで「食品価格や電気代」など生活コストの上昇(44.4%)となっていました。昨今はお米の価格が高騰し、政府は2025年産からお米を増産する方針を示していますが、自然災害によって生産量が減少することも懸念されます。その他の食品についても高温障害や水不足で収穫量が減少していますし、電力料金の値上げも先が見えません。こうした状況だからこそ、次回選挙で候補者を支持する際、<エネルギー・環境・気候変動>に「関心を持つ」と回答した人が71.2%に上ったものと考えられます。さらに、その中で次の選挙で気候変動への対応を強調する候補者に関心を持つと答えた人は66.9%(全体で割り戻すと47.6%)となっていました。

出典:ジャパン・クライメート・アライアンス(JCA)「選挙と気候変動に関する世論調査」

世界のメディアが連携する「89%プロジェクト」

どちらの調査でも日本社会の気候変動問題に対する認識の低さが示されている一方で、気候変動対策の強化を求める人が増えてきていることも示されています。かつて気候変動対策をリードしていた米国では、第二次トランプ政権下で科学軽視・化石燃料重視の政策が推し進められ、あきらめたり、行動することをためらったりする動きも出てきている中、日本では若者が気候訴訟を起こし、自分たちの未来を守ろうと動き出しています。こうした気候変動対策や気候変動との戦いに関連する話題を適切に伝えるのはメディアの重要な役割でもあります。

世界では、気候報道の強化に取り組むジャーナリストのネットワークであるCovering Climate Now(CCNow)が、「The 89 Percent Project(89%プロジェクト)」を始動させました。このプロジェクトは、2024年2月にNature Climate Changeに発表された世界的な意識調査の結果分析「Globally representative evidence on the actual and perceived support for climate action」で、13万人のうち89%が「自国政府は地球温暖化対策を強化すべき」と回答したことを受け、気候変動に対して政府がさらなる努力をすることで問題の解決を望んではいるものの、さまざまな理由で声をあげられない人々(サイレントマジョリティ)のストーリーを伝えることを目的として立ち上げられたものです。この調査では、日本にも85.73%と決して少なくないサイレントマジョリティがいることが示されています。

サイレントマジョリティの声を届ける動きが広がり、正確な報道が伝わるようになれば気候変動対策について話題にしやすくなります。科学に基づく知識を得た上で選挙候補者の主張の中で気候変動問題がどのように位置づけられているかを確認できるようになれば、「気候変動対策」への取り組みが候補者選びのひとつの要因となるでしょう。

政党および候補者の気候変動対策をみてみよう!

最後に、政党および候補者の気候変動対策のどのような点に注意してみるかですが、この点については環境NGOなどが各党のマニュフェストの評価・分析を公開しているので、それらを参考にするのも一案です。また、気になる政策や意見があったら、情報ソースであるマニュフェストや各党のホームページを読んでみましょう。投票することで、「サイレント(無言)」ではなく、自分の意見を候補者に託すことができるのです。
猛暑の夏の選挙、気候変動対策を加速するべく、政党及び候補者選びの参考になれば幸いです。

参考

気候ネットワーク:第27回参議院議員選挙ー各党選挙公約の気候変動エネルギー政策に関する分析ー(リンク
FoEジャパン:<参院選2025>各党マニフェストを比較!【原発・エネルギー編】~各党の特色は? 昨年との違いは?(リンク
WWFジャパン:参院選2025選挙公約比較(温暖化対策)(リンク
WWFジャパン:2100年の地球から この夏の参院選を見る(リンク
ワタシのミライ/原子力市民委員会:各政党アンケート(リンク

関連リンク

イプノス、プレスリリース「気候変動対策への日本人の意識低下が明らかに、32か国中最下位」(リンク
気候変動対策への日本人の意識低下が明らかに、32か国中最下位(リンク
【調査結果】3人に1人が「気候投票者」。都議選・参院選を前に選挙と気候変動に関する世論調査を実施(リンク)
he 89 Percent Project (リンク