【レポート】Ember報告書:クリーンエネルギーが世界の電力の4割に


2025年4月8日、国際エネルギーシンクタンクのEmberが、215か国の電力データの分析に基づき、世界の発電量の変化を包括的にまとめた年次報告書『世界電力レビュー2025(Global Electricity Review 2025)』を公開しました。この報告書には、2024年、太陽光発電に牽引されたクリーン電力*の記録的な伸びにより、世界の総電力量に占める化石燃料の燃焼以外の方法で発電された電力(低炭素電力)の割合が40.9%を占めたことが示されています。しかし、世界でクリーンエネルギーが急増する中、日本のクリーン電源による発電量は31.5%、再生可能エネルギーによる発電量は23.2%と、いずれも世界平均を下回っています。

*Emberがクリーン電力/電源あるいは低炭素電源とするものには、化石燃料(石油、ガス、石炭)を燃焼することで発電するもの以外、再⽣可能エネルギーおよび原⼦⼒が含まれています。

急速に成長している太陽光発電

2024年、再生可能エネルギーによる電力量は858TWhと、これまでの最高記録であった2022年の577TWhを49%上回り、過去最高を記録しました。背景には、その成長率(+29%)が20年連続でトップを維持し、世界の新規発電量において3年間連続で最大の電源(+474TWh)となっている太陽光発電の急成長があります。その発電量は過去3年間で倍増し、2024年には2,000TWh、総発電量の6.9%を占めるに至っています。

2024年に追加された太陽光発電のうち半分以上(53%)は、中国における増加であり、2024年の電力需要の増加分のうち81%をクリーン電力で賄っています。世界的な太陽光発電の急成長は今後も続くと見込まれており、2024年は、1年間で追加された太陽光設備容量が2022年に追加された容量の2倍以上となり、記録を更新しました。世界の太陽光発電容量は、2022年に1TWhに達していましたが、わずか2年後の2024年には2倍の2TWhにまで拡大しました。

日本において、太陽光発電は最大の低炭素電力であり、発電量に占める割合は、2014年から2024年に5倍の10%にまで増加しました。太陽光発電量に限れば、日本は世界第4位にランクしています。

低炭素電力の中では水力が引き続き最大の割合(14.3%)を占め、原子力(9.1%)がそれに続きますが、急速に割合の増えた風力(8.1%)と太陽光(6.9%)が合計では水力を上回る結果となっています。一方の原子力は、過去45年で最低でした。

世界では太陽光に続き2番目に成長が著しい風力発電ですが、2024年の日本の風力発電量は全体のわずか1%に過ぎません。日本以外のG7諸国では、風力発電の総発電量が平均12%まで増えていることと比較すれば、日本の風力の割合は著しく低いのが現状です。この結果、2024年における日本の再生可能エネルギーの割合は、最大のクリーン電力である太陽光(10%)と合わせても11%にとどまり、世界平均(15%)、地域平均(14%)を下回ることとなりました。

高温が温室効果ガスの排出量増につながった

Emberの分析によると、再生可能エネルギーの増加にも関わらず、2024年の化石燃料による発電は電力需要の増加に伴って1.4%増となり、世界の電力セクターの二酸化炭素排出量は1.6%増の146億トンCO2と、過去最高になりました。

化石燃料発電が増加した主要因は高温でした。冷房需要の影響による需要増(208TWh)は、2024年の世界の電力需要増のほぼ5分の1(0.7%)を占めており、この結果、化石燃料発電の増加率は4.0%となっています。この高温の影響がなければ、電力需要の増加分の96%を低炭素電力が賄い、化石燃料による電力需要の増加は0.2%に留まったと見られています。しかも、2024年の世界の化石燃料発電量の増加(245 TWh)は、電力需要の増加率に大きな変化があったにもかかわらず、2023年の増加量(246 TWh)とほぼ同じであったことも示されています。

需要増を上回る低炭素電力の成長

気象の変化による影響はともかく、既に、AI、データセンター、EV(電気自動車)、ヒートポンプなどによる電力使用量の増加が世界的な需要増加につながっており、これらの技術の利用拡大が2024年の世界の電力需要増に占める割合は0.7%と、5年前の2倍となっています。

本報告書は、低炭素発電の成長は、今後数年間に急速に増加する需要を上回り、化石燃料発電の恒久的な減少は始まっていると述べています。また、2030年まで電力需要が現在の予測を上回る年率4.1%のペースで増加したとしても、低炭素発電がその需要増を満たすのに十分であると見ています。

日本の化石燃料も既に衰退期を迎えています。電力セクタ-における化石燃料需要は2012年にピークを迎え、それ以来28%減少しています。2024年、夏場の気温上昇も一因となって日本の電力需要は9TWh(+0.9%)増加しましたが、低炭素電源はその2倍以上(+ 21 TWh)の伸びを示していたのです。

Emberのアジアプログラムディレクターであるアディティア・ロラ(Aditya Lolla)氏は、「アジアにおいては、太陽光などの再生可能エネルギー発電の記録的な成長が推進力となって、クリーンエネルギー転換が加速しています。アジア地域全体で電力需要の高まりが見込まれる中、クリーン電力拡大を継続するためには、確固としたクリーン電力市場の存在が重要になります。堅調な市場は、エネルギー安全保障と経済のレジリエンスを強化するばかりでなく、新興諸国が新しいクリーンエネルギー市場経済のもたらす利益を享受できるようにするためにも役立ちます」と述べています。

さらに日本については、「日本は太陽光発電の拡大で前進を見せました。最近発表された、2024年までの再生可能エネルギー発電拡大計画は評価できるものの、日本のNDCは設定目標値が低く、エネルギー転換が進む中で日本が他の先進国に遅れる恐れがあります」と発言しています。

レポートのダウンロード

Global Electricity Review 2025(リンク
Executive Summary in Japanese (PDF):

関連ページ
[Ember] 国別概説 Japan
[Ember] Electricity Data Explorer

作成・発行:Ember
発行:2025年4月8日