【ニュース】「気候危機を止めるのは今」若者気候訴訟の第2回口頭弁論で若者が訴え


2月18日、「明日を生きるための若者気候訴訟」(通称「若者気候訴訟」)の第2回口頭弁論期日が名古屋地方裁判所で開催され、原告2名と弁護団が意見陳述を行いました。

2024年8月に提訴されたこの訴訟では、日本各地に住む16人の若者の原告が、日本の主要な火力発電事業者10社に対し、CO2排出量を少なくともIPCC第6次評価報告書統合報告書が示す水準(CO2を2019年比で2030年に48%、2035年に65%削減)まで削減するよう求めています。

当日の裁判の傍聴には定員の2倍もの人が訪れ、裁判後の報告会でも会場に入りきらないほど、大勢が参加してくれました。原告の2名が法廷で意見陳述をし、報告会でも報告しました。以下はその抜粋です。

災害は、一回起きたら取り返しがつかない
暑さだけでなく、豪雨の被害もあります。福岡県南部では、8年前に朝倉市で土石流による甚大な被害がありました。一昨年、災害ボランティアに行ったのですが、復旧は全然進んでいませんでした。メディアで取り上げられないのでもう復旧したと思われているかもしれませんが、一回起きたら取り返しのつかないことになるということを自分の肌で感じました。

被告10社で世界18番目の国とほぼ同じ量を排出
さらに、被告の10社の責任について話しました。被告たちは、自社の排出量はわずかなのだから責任はないと言っています。しかし被告らだけで日本のエネルギー起源CO2排出量の3割を占めていて、国レベルで換算すると英国に次いで、世界200か国中18番目に多い量を排出しています。イタリア1か国の排出量よりも多い数字で、被告らは世界全体の排出量の0.9%を占めています。もし被告らがちゃんと対策を取らなくて良いのなら、それより排出が少ない約180か国は何もしなくても良いのでしょうか。そんなはずはありません。

火力発電所の段階的削減を
現状の深刻さを考えると、火力発電所を今すぐ止めろと言ってもおかしくありませんが、私たちは最低限、目標に向けた段階的削減をするよう求めています。裁判に出るのは初めての経験でしたが、被告らはオンラインでの出席で、相手の顔が見れなかったことは残念でした。今日の傍聴や報告会にこれだけ大勢の方が集まってくれたように、私たちの訴えは無視できるものではないと思うので、引き続きしっかり話していきたいと思います。

気候変動とその被害は、いま起きている
気候変動は将来の問題ではなく、実際にいま起きているのだと強調しました。私は北海道に住み、雪が身近な生活を送っていますが、その雪が変化しているのを実感しています。住んでいる十勝地方はもともと雪が降る機会が少ない場所ですが、この2月に、生まれて初めて経験するほどの量の雪が降り、車を家から出すのに2日かかりました。ニュースでも観測史上最大の雪と報道されていましたが、その原因は気候変動であり、海水温の上昇や、本来そこになかったはずの低気圧によって大雪が発生したのです。今まさに気候変動による被害が起きていることです。他にも、北海道の他の地域で雪の質が変わり、パウダースノーが無くなってしまったことや、私の住む地域の国立公園で、氷河期からの生き残りとも言われるエゾナキウサギや高山植物が姿を消しつつあります。

被告らには、人々の未来に責任を持ってほしい
気候変動が危機として認識されてから40年も経ちましたが、何も行われてきませんでした。これまではまだ余裕があるように見えて、行動しなくても良いと思えたかもしれません。しかし、いよいよティッピングポイントが目前になり、今やらないといけないというメッセージが、行動のためのキャッチフレーズではなく、事実になりました。だから被告も含めて、私たちが今、行動しないといけません。一緒に行動したいということや、誰かの命や、これから生まれてくる人々の未来に責任を持ってほしい。(被告にも良心があるかもしれないという仮定に基づいて伝えたとのことです。)

子どもたちに「なぜあの時何もしなかったのか」と言われたくない
最後に、自分の未来を考えたときに、これから生まれてくる子供たちに、なぜあの時何もしなかったのかと言われたくないということや、毎日感じている気候危機への不安も話しました。

被告らは原告らの訴えの門前払いを求める

10月24日に行われた若者気候訴訟の第1回期日では、被告10社が、「2030年・2035年という将来時点の排出削減を求める請求であるところ、将来の科学や国際合意、国内対策は変わりうるもので、大阪国際空港訴訟の最高裁判決によれば、現時点で将来の請求をすることはそもそも許されない」との主張をしていました(これは「本案前の抗弁」といわれるものです)。

被告らは、本来、原告の指摘する事実が正しいのか、間違っているのか、知らないのか、間違っているとしたら何が間違いなのか(「本案」への認否、答弁)をしなければなりません。しかし、第1回期日で被告らは、「本案」については何も応答していなかったため、裁判長が被告らに対し、答弁を促しました。
今回の第2回期日では被告から本案に対する答弁も提出されましたが、原告側弁護団によると、あいまいな記載にとどまっているそうです。

報告会で、原告側弁護団の半田虎生弁護士は、「被告らの裁判の門前払いを求める主張は、その前提となる『本案』の内容に係っているのに、その議論を避けてこの訴訟を門前払いするよう求めるもので、日本の最大級の排出事業者として許されない」と述べました。
また、浅岡美恵弁護士は、「被告らのこうした主張は、1.5度目標の実現のためにIPCCや国際社会から求められている排出削減責任が、2030年や2035年には今より被告らに有利に変わる(即ち、削減責任が軽減される)との期待を前提とするもので、1.5度に抑える必要性を認めていないことの現れ。被告らのこうした態度こそ、この訴訟が必要となった理由だ」と指摘しました。

次回の口頭弁論は5月22日

次回の第3回口頭弁論期日は、2025年5月22日(木)14時から予定されています。裁判の日程や報告会など、若者気候訴訟に関する詳細な情報は公式ウェブサイト(https://youth4cj.jp/)に掲載されています。今回、原告が主張したように、気候危機はすでに起きており、それを止めるためには、今、行動しなければなりません。原告の若者たちの声を通じて、気候危機対策の重要性に関心が高まり、被告となった企業の確実な気候変動対策につながることを期待します。