【ニュース】日本のアンモニア混焼にTransition Zeroが警告


4月15~16日に札幌で開かれたG7気候・エネルギー・環境大臣会合(以下、G7環境大臣会合)における議論で、アンモニアや水素を火力発発電所に混焼するとの日本の主張が大幅に取り入れられたとする報道もありますが、この会合に合わせてTransiton Zeroが公開した記事には、東南アジア諸国は、アンモニアを石炭と混焼することによる排出量削減の可能性について誤解していると指摘しています。

Transition Zeroの分析には、アジアの石炭発電所にアンモニアを混焼させることは、資本の膨大な浪費であり、気候変動に悪い影響を与える可能性があると記されています。

  • 日本の産業界は、石炭火力へのアンモニア混焼が東南アジア諸国において効果的な排出削減戦略になるとの誤ったシナリオを売り込んでいる。
  • 石炭火力発電所にアンモニアを20%混焼させた場合、CO2排出削減の処置を施されていないマレーシアの平均的なガス火力発電所と比較して94%、タイでは77%、フィリピンでは60%、インドネシアでは44%多くのCO2を排出することになる。
  • 水素とアンモニアの製造は(サプライチェーン)上流における排出とエネルギーロスが非常に大きいため、アンモニア混焼は、CO2排出処置を施されていない石炭火力発電所を運転する以上に環境負荷が高くなる可能性がある。
  • グリーンアンモニア(再生可能エネルギーを利用し、CO2を排出することなく製造された水素を用いて製造するアンモニア)を利用したとしても、アンモニアで電力部門のネットゼロを達成できる道筋はない。
  • アンモニアを発電部門以外(非エネルギー)の用途で利用すれば、本当の意味で排出削減効果が期待できるが、発電燃料として燃焼させることは、貴重な資源の無駄遣いとなる。

 

Transiton Zeroは、この記事の公開時点、G7環境大臣会合でアンモニア混焼が論点のひとつになることを懸念していましたが、大臣会合で採択された共同声明(コミュニケ)には、「電力セクターで低炭素及び再生可能エネルギー由来の水素並びにその派生物の使用を検討している国があることにも留意する。」と記載されました。日本は、アンモニアを「クリーンな燃料」あるいは「燃料時にCO2を排出しない脱炭素燃料」としてその活用を前面に押し出し、閉鎖すべき石炭火力発電所でアンモニア混焼を行うことで既存設備の利用を延長しつつ、排出を削減したように見せかけようとしています。この記事中にも、今年のG7の議長国である日本が、「水素並びにアンモニアなどのその派生物」の利用を積極的に推進していることへの懸念が示されています。

この記事には、以前のTransition Zeroのレポートの内容も踏まえ、アンモニア混焼によるCO2排出削減量、価格(東南アジアにおける再エネ価格との比較も含む)、アンモニア製造におけるCO2排出およびエネルギーロスなどにつき、具体的な数字が図表を交えて示されています。

燃焼時のコストと排出量だけを見てもアンモニア混焼の問題は明らかですが、さらに上流のサプライチェーンにおける排出量を考慮すると、より大きな問題が見えてきます。こうした分析の結果として、Transition Zeroは、アンモニア混焼という誤った対策が石炭からの撤退を遅らせることがあってはならない、日本は電力部門のアンモニア混焼に投資する代わりに東南アジア諸国の自然エネルギーに投資することで、より経済的な方法で気候変動目標に沿うようにすべきであると述べています。

掲載サイトへのリンク

詳細な内容および図はTransition Zeroのサイトをご覧ください。
● Japan’s toxic narrative on ammonia (13 Apr, 2023) (リンク

関連レポート

● Transition Zeroのレポート:日本の石炭新発電技術 – 報告:日本の電力部門の脱炭素化における石炭新発電技術の役割(リンク

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環境省:G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合(リンク
*G7 気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケの原文(英語)および日本語仮訳が公開されています。