2021年3月31日に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が「2021年度供給計画の取りまとめ」を公表しました。現在の日本のエネルギー基本計画では石炭と原発を「重要なベースロード電源」としており、それに基づくエネルギー長期需給見通しでは、2030年の電源構成(エネルギーミックス)を原発20~22%、再エネ22~24%、LNG27%、石炭26%、石油3%としています。本年の電力供給計画はその2030年のエネルギーミックスの達成について、供給面からの見通しを初めて事業者側が示したものとなります。その内容を下記にご紹介します。
2030年度の電源構成で石炭の占める割合は34%
2021年3月31日に公表された「2021年度供給計画の取りまとめ」では、2030年度の電源構成は、再エネ28%(新エネルギー等(風力、太陽光、地熱、バイオマス、廃棄物)18%+水力10%)、原子力4%、LNG29%、石炭34%、石油2%となります。また、同取りまとめによれば、2030年度には石炭火力が発電量全体に占める割合が対2020年度比で約5%増加し、従前の計画(「2020年度供給計画の取りまとめ」における2029年の石炭割合は37%)と同じく石炭が最も大きな割合を占めています。
送電端電力量の推移と見通し
火力発電の設備容量の増加の全てを石炭が占める
設備容量は2020年度から10年後までの見通しでは増加傾向にあり、電源別に見ると水力、原子力は横ばいですが、火力発電は約447万kW、再生可能エネルギーは約3,176万kW増える見込みです。火力発電の内訳を見ると、石油、LNGは減少が見込まれる一方で、石炭は増加が見込まれることから、火力発電の設備容量の増加分の全てを石炭が占める計算となります。
設備容量(全国合計)
新設・廃止計画からは事業者の石炭依存方針に変化は見られず
2020年度供給計画では火力発電の新設・廃止計画について、石油は廃止が大幅に進む一方でLNGは昨年度の取りまとめ時では新設と廃止の出力がほぼ同等でしたが、今回は廃止計画の出力が昨年度より約330万kWほど減っています。石炭については昨年度と同様に老朽化した非効率なものも含めて維持しつつ、新設で増強することで、火力発電全体としては石炭依存度を高く維持しようとしていることが伺えます。
火力発電の新設・廃止計画
石炭火力の設備利用率は約7割を維持
さらに、電源別の設備利用率は、石炭が約65%でほぼ横ばいであるのに対し、LNGが2020年に47.9%であったのが10年後には35.0%と13ポイント下がる見通しで、LNGよりも石炭を優先して利用する計画であることは昨年度時点の計画と変わりありません。
電源別設備利用率
一方で昨年度の計画と比較すると、本年度の計画では将来におけるLNGの設備利用率低下がよりゆるやかであり、また地熱とバイオマスの設備利用率の上昇を見込んでいます。原子力については設備利用率は昨年度の20%から10%への減少傾向から、本年度は10%強での推移を見込み、事業者はより低水準の原子力発電の利用を見込んだ計画を策定しています。
参考:電源別設備利用率(2020年度供給計画取りまとめ時点での推定)
最後に
OCCTOは今回のとりまとめの中で、「2030年度の送電端電力量(kWh)では、石炭火力の比率が約36%、原子力の比率が約4%と、エネルギーミックスで示された構成比と比べて乖離が生じていることが明らかとなった」と高止まりする石炭比率がエネルギーミックスの値と乖離していることを認めています。また、「今後もこのままの傾向で推移することも考えられ、更なる政策的取組や事業環境変化等を踏まえて事業者が計画を見直すに至らなければ、2030年度のエネルギーミックスの達成は困難となる」とも分析しています。
さらに、この供給計画が発表された後、4月22日に日本は2030年の温室効果ガス削減目標を発表し、2013年度比46~50%削減へと引き上げました。これらのことは必然的に石炭火力を2030年の段階で使用し続けるという選択肢が残されていないことを意味します。政府は、これまでのエネルギーミックスに合わせるのではなく、石炭火力全廃に向けて政策を抜本的に転換することが不可欠で、事業者に対しても「脱石炭」のシグナルを早急に発信する必要があるでしょう。
参考:電力広域的運営推進機関「2021年度供給計画の取りまとめ」(2021年3月)
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【ニュース】OCCTO電力供給計画、2030年度までの見通しを示す(PDF)