3月29日、気候ネットワークと個人株主3名が、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)に対して株主提案を提出したことを発表しました。この提案は、MUFGがパリ協定の目標に沿った投融資を行うための計画を決定し、開示することを求めたものです。
MUFGは、2019年に石炭火力発電の新たな事業への融資は原則実施しない方針を決め、石炭火力発電所開発へのプロジェクトファイナンス(事業融資)の残高を、2040年度にゼロとする目標を打ち出しましたが、その後も石炭関連事業および化石燃料の利用拡大を進めている企業への大規模な融資を続けています。気候ネットワークと共同提案者は、MUFGの現行方針ではパリ協定の1.5℃目標(産業革命前からの気温上昇を1.5度未満に抑える)を達成するには不十分であるとして、株主提案を提出しました。
そして4月26日、MUFGは「MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク 」における「特定セクターに係る項目」の石炭火力発電セクターおよび森林、パーム油セクターに関するファイナンス方針の改定を公表しました。この新方針では、石炭火力発電所の新設に加え、既存発電設備の拡張にも原則としてファイナンスを実行しないと規定しており、一歩踏み込んでいます。しかし、「パリ協定目標達成に必要な、CCUS(補足:二酸化炭素回収・貯留)、混焼等の(補足:アンモニアや水素を石炭に混ぜて燃焼させる)技術を備えた石炭火力発電所は個別に検討する場合があります」との例外を残しています。これらは石炭火力を延命する技術にすぎず、パリ協定と整合しているいうことは難しいところです。
日本では、会社の気候変動対策に関する方針に対して株主が行動する事例は多くありませんが、世界では株主・機関投資家からの働きかけに企業が応じる動きが加速しており、金融機関や化石燃料関連企業に対する株主の関与が企業の方針決定に影響を及ぼす事例が増えています。米環境団体Sunriseが公開した気候変動に関する株主提案をまとめたサイト「Critical Climate Votes」に他の事例とともにMUFGへの株主提案も掲載されています。
日本の金融機関も脱石炭に向けた石炭関連事業などへの融資の厳格化にさらに踏み込む必要に迫られています。今回の株主提案が金融機関の取り組みをさらに加速させることになるか、注目です。
関連情報
- 気候ネットワーク <共同プレスリリース>MUFGが石炭火力・森林セクター方針を改定、なおパリ協定と整合せず(2021年4月26日)
- 気候ネットワーク 【プレスリリース】三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)へ気候変動に関する株主提案を提出(2021年3月29日)
参考情報
- 気候ネットワーク 【プレスリリース】 みずほFGへの株主提案の議決結果について (第2次集計)(2021年1月21日)