国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)にて、韓国が「脱石炭国際連盟(PPCA)」への加盟と、2035年の国別削減目標(2035NDC)を公式に発表し、脱石炭に向かう姿勢を世界に示しました。
PPCAに加盟
韓国は、2025年11月17日に脱石炭国際連盟(PPCA)への加盟を発表し、シンガポールに続きアジアで2番目のPPCA加盟国となりました。韓国の石炭火力発電所設備容量は世界7位の規模ですが、今回のPPCA加盟により排出削減対策なしの石炭火力発電所の新規建設は行わないと表明しています。また、現在稼働中の61基の石炭火力発電所のうち40基は2040年までに段階的に閉鎖することが確定しており、残る21基の廃止時期は経済的・環境的妥当性を基に、来年までに具体的な計画をまとめる方針と発表しました。
韓国の金成煥(キム・ソンファン)気候・エネルギー・環境相は、「石炭からクリーンエネルギーへの転換は、気候変動対策に不可欠であるだけでなく、韓国および他の全ての国々のエネルギー安全保障を強化し、企業競争力を向上させ、数千人の未来の雇用創出にも寄与する」と述べています。
PPCAは、2017年にドイツのボンで開催されたCOP23にて英国とカナダが主導して発足した石炭火力発電の段階的な廃止を目指す国際的な枠組みです。COP30で韓国とバーレーンが加盟したことで、現在、65か国、118の地方自治体・国際団体などで構成されています。
新しいNDCの発表
同じくCOP30で、韓国は2035年までの削減目標を示す新しい国別削減目標(NDC)を発表しました。新たな目標は、2035年までに温室効果ガスを2018年と比べて53%から61%の削減を目指すもので、2050年にはカーボンニュートラルを成し遂げるという意志を明確に示す内容となっています。2021年に発表していた前回のNDCー2030年の温室効果ガス削減量を2018年比で40%削減するーから大幅に上方修正したことになります。
韓国政府は11月11日、李在明(イ・ジェミョン)大統領が主宰する閣議にて、2035年までの国の温室効果ガス削減目標を2018年比で53%から61%とする内容を盛り込んだNDCを決定しました。直前6日の公聴会では「50%から60%削減」と「53%から60%削減」の2つの案が提示されていましたが、削減率をより強化した形でまとまりました。
入札プロセスの中止~アンモニア混焼への支援を断ち、石炭火力の延命を止める
このNDCの検討に先立つ10月17日、韓国政府はClean Hydrogen Portfolio Standard(CHPS )の2025年入札プロセスの第2ラウンドを一時中止すると正式に発表し、発電会社を驚かせました。長期契約制度であるCHPSは、クリーンエネルギー発電を促進することを目的に導入されたばかりで、その対象にはアンモニア混焼への支援も含まれており、事実上老朽化した12基の石炭火力発電所を2040年以降も稼働し続けられるようにするものでした。しかし、入札開始後に化石燃料の段階的廃止を加速させることを公約していた李在明(イ・ジェミョン)大統領の新政権が発足。アンモニア混焼は排出削減効果が乏しく、2040年までの石炭火力の段階的廃止という同政権の計画と矛盾するとして疑問を投げかけていたことが、入札の中止につながりました。アンモニア混焼が対象外となったことで、発電コストの上昇が見込まれており、業界関係者は現実的な価格設定メカニズムの必要性を指摘しています。気候・エネルギー・環境省は、入札条件におけるクリーン水素の基準をただちに変更する、あるいはブルー水素を排除する計画はない(グリーン水素のみに狭める予定はない)と説明しており、今後、石炭火力発電所の閉鎖まで一時的に混焼を認めるか、アンモニア混焼を除外するかなどの入札条件の見直しを経て、年内に再公示を行うとして検討を進めているようです。
COP30前後の韓国のクリーン水素発電入札におけるアンモニア混焼の除外とNDCの引き上げ、さらにPPCAへの加盟は、韓国にとってこれまでで最も野心的な気候変動対策を公約したものであり、韓国を真の転換へと前進させるものです。この一連の意志表明にて、韓国はアジアのエネルギー転換における主導的立場を確立していくと思われます。果たして日本はどのようにアジアでの地位を固めていくのでしょうか。
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