【ニュース】オランダ・ハーグ市が化石燃料関連の屋外広告を禁止


オランダのハーグ市が、2024年9月12日に世界で初めて化石燃料関連の屋外広告を全面禁止する条例を可決しました。この条例は、街頭の看板やデジタルサイネージ、公共の広告スペース全てを対象に、ガソリン車やクルーズ船、航空旅行など、化石燃料に依存する製品やサービスの広告を禁止するものです。2025年1月1日から施行されます。

今年6月5日には、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、気候変動対策の一環として、化石燃料業界の広告掲載を禁止するべきだと発言しました。かつてはあらゆる場所で見られたタバコの広告が、健康を害するからとの規制によって街から消えたのと同様に、各国政府やメディアに対して大規模排出企業の広告を禁止するよう呼びかけたのです。

近年、グリーンウォッシュ広告に対する規制が増えてきていますが、ハーグ市の条例は法的拘束力を持つので、企業が違反した場合には法的措置をとることで、実効性のある広告規制が可能となります。

すでに、様々な国や都市で化石燃料企業の広告を規制する動きが高まっています。フランスは2022年に化石燃料企業の広告を禁止しています。化石燃料の直接的な広告にのみ適用されたもので、当時は天然ガスが対象外になるなど抜け穴があると指摘されていましたが、国レベルの広告規制としては先駆けと言えます。オーストラリアでは、シドニー市議会などが、化石燃料の広告やスポンサーシップに対するさまざまな制限を決議しています。スコットランドのエディンバラ市議会は、今年5月に首都全域の市が所有する広告スペースにおいて、化石燃料企業や航空会社、ガソリン車、クルーズ、武器などの広告掲載を禁止することに合意しました。オランダのアムステルダムでは、公共交通機関を含む中心部での化石燃料の広告の掲載を禁止しています。

ハーグ市の条例は、二酸化炭素排出量の多い化石燃料製品やサービスの広告掲載を禁止していますが、化石燃料産業による政治広告や、一般的なブランドを宣伝する広告は対象としていません。とはいえ、可決されるまでに2年を要したとされるこの条例が、オランダの行政の中心地であり、国際法の中心地でもあるオランダの議会で可決されたことは、他の禁止令とは異なり、覆すことが難しいだろうという点で重要であると見られています。

オランダは2050年までのカーボンニュートラルを目指していますが、ハーグ市は2030年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。国家目標よりも高い目標に向かって取り組みを進めているハーグでの条例可決は、化石燃料関連企業などの広告を規制するキャンペーンを展開している世界各地の動きを後押しするきっかけとなるでしょう。

日本では化石燃料企業や高排出事業の広告が野放しになっています。国境を超えてビジネス展開する以上、オランダをはじめとした各国の規制を無視することはできません。日本でも同様の法令または規制が整備されるとともに、各企業が自社の広告を見直し、気候変動に加担するような事業の広告の自主規制に乗り出すことを強く求めます。

関連情報

気候ネットワーク:【プレスリリース】JERAの「CO2の出ない火」などのグリーンウォッシュ広告について JAROへの申立とその回答を国連に情報提供(2024年8月15日)(リンク

参考

オランダの広告規制キャンペーン “Fossil Free Advertising for a ban on fossil fuel advertising” (オランダ語+複数の欧州言語 リンク