2023年11月30日、国際環境シンクタンクのClimate Action Tracker(CAT)が、日本の気候変動対策についての分析結果と評価を更新しました。
パリ協定の1.5℃目標の達成に向けた日本の政策への総合評価は「不十分」とされ、部門ごとの評価では気候変動資金Climate Financeが「非常に不十分」と評価されました。
CATは日本政府が2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針(GX基本方針)」についても言及し、以下の問題点を挙げています。
- 野心的な脱炭素の取組よりも、経済成長とエネルギー安全保障に重点を置いている
- 2030年と2050年に向けた具体的な排出削減目標がない
- カーボンプライシングの導入時期が遅く、炭素価格が低水準
- 技術的・コスト的な課題が解決していないCCSや水素・アンモニア混焼を「クリーン・コール」技術として国内外で推進しようとしている
- 原発の再稼働や新設には依然として課題が多く、2030年の削減目標達成には貢献しない
さらに、日本がアジアゼロエミッション共同体(AZEC)構想を通じて「クリーン・コール」に続く「イノベーション」技術をASEAN諸国に広げようとしていることや、2023年のG7サミットで日本が2030年までの石炭火力の段階的廃止に反対したこと、日本が海外でのLNG開発事業を継続していることなども、1.5℃目標に整合しないと評価されています。
日本が政策文書において「クリーン・コール」「グリーン・トランスフォーメーション」「電動化自動車」「クリーン水素」といった言葉を頻繁に使用していることについては、誤解を招き、日本が化石燃料に依存し続けようとしていることを覆い隠すグリーンウォッシュだと批判されています。
追加的な対策がない場合、現在の日本の政策が達成できるのは2030年に2013年比31~37%の排出削減に留まります。このままでは、1.5℃目標に整合する「2030年までに2013年比60%削減」どころか、日本の現在のNDCすら達成できません。CATは日本の気候政策の改善策として、以下の取組を提案しています。
- 2030年までに石炭火力の段階的廃止を完了すること
- 海外の化石燃料事業に対する公的資金と、「クリーン・コール」関連技術を推進するための国際キャンペーンを停止すること
- 再生可能エネルギーの導入量拡大を優先し、エネルギー基本計画において再生可能エネルギー拡大に向けた目標を強化すること
- 2035年までに全ての化石燃料自動車の新車販売を停止するために、電気自動車に関する目標を強化すること
関連リンク
Climate Action Tracker 日本の評価ページ(リンク)