【ニュース】世界は脱石炭に向けた結束を強化、日本は不参加


11月20日、アゼルバイジャンのバクーで開催されていた国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)にて、欧州連合(EU)と英独仏などにオーストラリアも含めた25か国が、石炭火力発電所の新設を行わないことを約束する有志連合を発足させ、他国にも追随するように求めました(Call to Action for No New Coal)。有志国は、連携して温室効果ガスの排出量が多い石炭火力から早期に脱却するよう国際社会に働き掛ける考えを示しています。
翌21日には、EUやカナダらによる1.5℃目標に整合した次期NDC強化に関する共同宣言も発出されました。欧州委員会のウォプケ・フックストラ気候変動対策担当委員が、志を同じくする野心的な国々の代表とともに記者会見を開きましたが、日本代表の姿はありませんでした。

新規石炭建設の余地はないのにー

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示したシナリオによれば、1.5℃目標を達成するためには、世界の石炭および化石燃料の使用を減らさなければならないことは明らかです。そこに新規の石炭火力発電所を作る余地はありません。石炭火力の開発を行っている(計画中および建設中)国の数は、2014年の75か国から2024年にはわずか40か国とほぼ半減した一方で、2023年の石炭の生産量は約2%増加、石炭による発電量は1.9%増の10,690テラワット時(TWh)と記録を更新しており、石炭が引き続き世界最大の発電源となっていることが示されています。

COP28(2023年12月ドバイで開催)では、「化石燃料からの脱却」が1つの焦点となり、日本も含めた締約国が合意をしました。そして2024年のG7サミットでは、「2030年代前半、または各国のネットゼロの道筋に沿って気温上昇を1.5℃に抑えるスケジュールで既存の排出削減対策がとられていない石炭火力を段階的に廃止する」ことが合意されています。しかし、日本は新規石炭の建設はしないとは公言したものの、IPCCの定義するところの削減率には到底達しない程度であっても、アンモニアや水素を混焼することで排出されるCO2が減れば「排出削減対策(アベイトメント)」が取れていると言えるとの独自解釈を付けて石炭火力の延命につながる技術開発を進めると同時に、トランジションと位置付けるガス火力の新設・建替えを進めています。

有志連合・共同声明、ともに日本は不参加

今回のCall to Action for No New Coalには、欧州連合(EU)と25か国が参加しており、既に国内すべての石炭火力発電所を閉鎖した英国をはじめ、産炭国であるオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダを含む署名国は、新たな石炭火力発電所を建設しないとの方針を、NDCを含む気候変動やエネルギーに関するそれぞれの国家計画に反映させることを約束しました。G7では日本と米国のみが参加を見送っています。

署名国:
アンゴラ、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、コロンビア、キプロス、チェコ、デンマーク、ドミニカ共和国、エチオピア、フランス、ドイツ、イタリア、マルタ、モロッコ、オランダ、ノルウェー、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、英国、ウガンダ、ウルグアイ、バヌアツ

また、日本はネットゼロを目指すための野心的なNDCの提出を目指す共同宣言にも参加しませんでした。次期NDCを2035年度に13年度比で60%減とする調整を進めていると報じられていますが、国際環境シンクタンクClimate Action Trackerによる分析では、日本は2035年までに81%削減(2013年比)すべきとの目標が示されているなど、まったく野心的な削減目標とは言えない状況です。

COP29でも化石賞を受賞

11月15日、COP29での初めての『本日の化石賞』がG7に贈られました。その理由としては、過去20年間、増え続ける気候ファイナンスの負債を支払うという財政責任から逃れ、回避し、逃げ続けてきたことが挙げられています。確かに、今回のCOPが「資金のCOP」と呼ばれているように、気候対策資金は重要な課題です。というのも、資金と野心引き上げは表裏一体だからです。特に途上国は資金的裏付けができれば野心の引き上げが期待できます。先進国は先んじて気候変動を抑える対策を強化することに責任を持ってNDCを引き上げ、資金を投じることによって世界全体の目標達成に近づけるために努力する必要があります。

さらに閉会を控えた22日には、日本を含む先進国(24か国・地域)にCOP29を通してもっとも足を引っ張った国に贈られる『特大化石賞』が贈られました。先進国は、気候危機を引き起こした責任があるにもかかわらず、気温上昇を1.5℃に抑える目標を達成するために必要な資金を支払う義務から逃れようとしている、しかもいまだに多額の資金を化石燃料につぎ込んでいることが理由とされています。

既に英国は脱石炭火力を達成し、より野心的なNDCを提出していますが、日本を含む他のG7および先進国は、1.5℃目標に整合させるべく削減目標を引き上げたNDCの作成・提出と、グローバル・ストックテイク(GST)の実施を可能にするための道筋を反映させた対策の実行を進めていかなければなりません。

G7諸国としての責任を果たすには

世界が脱石炭に向けて新たな結束を結んだほかにも、明るいニュースが入ってきています。石炭火力発電所の新規計画が集中している10か国の1つであるインドネシアの大統領が、COP29とほぼ同時期(11月17日~19日)にブラジルで開催されていたG20首脳会議(リオデジャネイロ・サミット)で、「今後15年間ですべての化石燃料火力発電所を段階的に廃止する」ことを計画していると発表したのです。発展途上国のエネルギー需要に対応するには化石燃料による発電所が不可欠との論調を打ち破ることにつながると期待できます。日本政府およびインドネシアなど東南アジア諸国への混焼技術の輸出や、ガス火力の新規建設計画に関与している企業は、被援助国の意向にも真摯に向き合うべきでしょう。

日本がG7としての責任を果たすには、COP29での国家および非国家アクターの動きを受け止め、脱化石燃料、再エネの主力電源化、省エネの徹底を基本とした政策に舵を切り、1.5℃目標に沿う野心的な次期NDCを表明するとともに、真に脱炭素となる対策に十分な投資を行う必要があります。さらに、インドネシアを含む東南アジア諸国への技術輸出などにおいても同様に再エネと省エネに資金を集中的に投入していくことが求められます。

11月15日の『本日の化石賞』受賞、現地参加NGO撮影・提供

関連リンク

Call to Action for No New Coal in national climate plans(リンク
PPCA PR:25 Countries and the EU launch Call to Action for No New Coal in National Climate Plans(リンク

参考

E3G Blog:Beyond negotiated text: building diplomatic groundswell for energy transition in 2025(リンク