2025年の夏(6月から8月)は昨年にも増して暑い夏でした。日本気象庁によれば夏の全国平均気温の平年差は+2.36℃となり、観測史上もっとも高い記録となりました。報道でも「地球温暖化」や「気候変動」という言葉を耳にする機会も増えており、気候変動に関する日本人の意識も変わってきているようです。とはいえ、国際気候変動パネル(IPCC)の報告書を知らないという人も半数を超えています。今回は、気候変動に関連する3つの意識調査を紹介します。
「気候変動に関する意識調査」
デジタルテクノロジーを活用して企業や地域の脱炭素化を支援している株式会社アイ・グリッド・ソリューションズが、全国の男女1000人を対象に市場調査を実施した「気候変動に関する意識調査」では、9割におよぶ人たちが「夏の長期化」を実感している反面、自ら温暖化対策を実行している人は半数以下であることが示されました。
「夏は年々長くなっていると感じますか」との問いに対しては、90.4%が「思う」(「とてもそう思う」と「ややそう思う」の合計)と回答。「日本の四季に変化を感じる」(「とても変化を感じる」と「やや変化を感じる」の合計)と答えた人は86.5%に上りました。この結果からは、多くの人が夏に限らず、四季全体に変化が起きていると認識していることが見て取れます。さらに、「今後も酷暑や異常気象が続くと思いますか」という質問では、「そう思う」と回答した人が94.1%に上っており、多くの人が今夏と同様の現象が続くと考えていることが示されています。

興味深いのは「酷暑や異常気象の原因」に関する質問で、原因を「知っている」「思いつくことはある」と答えた人を合わせると81.2%と、どこかに原因があると意識していることが示されたことです。「地球温暖化の原因」に関する質問では「二酸化炭素(CO2)の排出」が 72.2%と最も高く、他にも「化石燃料の使用(石油・石炭など)」が51.5%、「火力発電の利用」が37.5%だったことから、科学に裏付けられた情報がある程度浸透してきていると見られます。

ただし、「地球温暖化に関する認識」に関する質問では、「地球温暖化」という言葉を「知っている」「聞いたことがある」という人が95.7%に上りましたが、国連のグテレス事務総長の発したショッキングな「地球沸騰化」という言葉を「知っている」「聞いたことがある」という人は56%に留まっており、国連の警鐘の認知度はまだ低いことが見て取れます。
「現代日本の社会・生活に関する意識調査」
2つめは、NHKの文研・世論調査部が行った2024年度「現代日本の社会・生活に関する意識調査」です。調査時期は2024年10月29日から12月10日と少し前になりますが、全国の18歳以上の2000名からの回答を分析したものです。
この中に環境に関する質問として「地球温暖化の生活への影響」という項目がありました。「地球温暖化が、私たちの生活に、どのくらい影響を与えていると感じていますか。」との質問に対し、「大きな影響を与えている」67%と「ある程度影響を与えている」27%を合わせると約94%が、地球温暖化は生活に影響を及ぼしていると考えていることが示されていました。

次に「地球環境を守るためなら、今の自分の生活が、多少は不便になってもかまわないと思いますか。」との質問には、「そう思う」と「どちらかといえば、そう思う」を合わせた回答が約76%で、「そう思わない」「どちらかといえば、そう思わない」を合わせた21%を大きく上回っていました。「地球温暖化」に対応するためには現状を変えなければならないという切迫感は、「地球温暖化」についての意識ほど高くないこと、生活を変えることに負担を感じる人がいることが示されたと言えそうです。

「気候変動に関する世論調査(速報)」
10月31日、内閣府が「気候変動に関する世論調査(速報)」の結果を公開しました。この調査は、2025年9月から10月中旬に、全国18歳以上の日本国籍を有する者 3,000人を対象として、郵送またはインターネット回答を求めたものです。
この調査でも、気候変動が引き起こす問題に「関心がある」は91.7%と、「関心がない」の7.8%とは大きな差が出ています。気候変動の影響を感じる理由について、最多が「夏の暑さ」で、「雨の降り方の激しさ」「洪水などによる気象災害の増加・激甚化」が続くことを見ると、やはり他の意識調査同様、実際に体験したことが気候変動に対する意識を高めているようです。
しかし、国連気候変動パネル(IPCC)が「人間の活動が地球を温暖化させてきた」と断定する見解を示したことに対する認知度を聞く質問では、「知らない」との回答が64.4%と、「知っている」の34.8%を大きく上回っていました。地球温暖化の原因は人間活動だと断定したIPCCの報告書は、気候変動対策の科学的知見を語る上では欠かせないものですが、3割程度しか知らないという現実が示されたわけです。
脱炭素社会に向けた取組への意欲に関する質問では「積極的に」「ある程度」取り組みたいとの回答は89.2%と高い反面、「取り組みたくない」との回答(9.7%)もあり、その理由を複数回答で尋ねた項目では「効果があるのか分からない」が56.4%でした。気候変動による熱波や洪水といった自然災害を防止・軽減するための取り組みである「気候変動適応」という言葉自体を「知らなかった」51.6%は「知っていた」11.6%を上回っていました。
なお、10月末に公開されたものは速報値であり、確定値は後日改めて公表されることになっています。
ここで紹介した以外にも、気候変動(暑さ)による消費行動への影響や、猛暑による健康意識、あるいは行動への変化などに関するアンケートなど、さまざまな意識調査や社会行動の調査が行われています。どの調査からも、近年の長引く猛暑や多発する自然災害が、地球温暖化に関する人々の意識に変化をもたらしていることが見て取れます。
一方で、IPCCの報告書に示されているように「人間の活動が地球を温暖化させた」との認識が薄いこと、「緩和」という概念が浸透していないこと、そのために多くの人が何をしたら良いのか分からないまま、認識が実際の行動につながっていないことも浮彫りになりました。わかってはいるが、生活は変えたくない、何らかの行動をすることには負担を感じるという人がいるのも事実です。
地球温暖化の認識や何かしなければと思っている人は着実に増えています。
気候変動に向けて市民が何をすればいいのか、いくつかの環境団体がガイドブックなどを発行しています。
まずは現状を知り、これらの情報源を参考に自分がやってみたいと思えることから始めてみてはどうでしょうか。
参考
気候ネットワーク:【小冊子】気候アクションガイド
グリーンピース:気候危機を止めよう!アクションガイド#01
国際連合広報センター:個人でできる10の行動

