韓国政府は、日本と同様に新規の石炭火力発電所の建設を計画していますが、これに対し、大きな反対の運動が起こっています。
ソウルの南西約60キロに位置する唐津(タンジン)では、韓国初の100万kW超えとなる116万kW(54万kW×2基)の超々臨界圧発電所となるDangjin Eco Power(Unit 9, 10)の建設計画が進んでいましたが、2016年7月、市民の反対運動と1週間のハンガーストライキが起こり、この計画は延期されることになりました。
唐津火力発電所と住民の反対運動
唐津には既に、韓国電力公社(KEPCO)の子会社である韓国東西発電(EWP)が運営する火力発電所がありますが、新たな大型の発電所2基(それぞれ2021年11月、2022年3月の運用開始を予定していた)の増設計画が進められてきました。ところが、政府が資産価値の情報を公開しないために銀行がローン査定出来ずに資金繰りが滞っていました。そして、7月28日に建設承認が出される予定に先立って,7月19日に建設計画に反対する900人もの人がデモを起こし、さらにその翌週にはHongjang Kim 唐津市長と住民グループ代表の2名がハンガーストライキを決行し、「唐津市民は石炭火力発電所からの公害のない環境に住む権利があり、政府は環境を守る責任がある」と訴えたのです。この事態を重く見た韓国政府は、26日の午後に建設の無期限延期を発表しました。
日本と同じように誤った歩みを進みつつあるように見える韓国ですが、この問題に気づいた韓国市民の大きなアクションにより、石炭火力建設はより厳しい状況に直面しています。
実はこの計画に日本も無関係ではありません。今回の唐津の計画では蒸気タービン発電機の製造を三菱重工が、供給を丸紅が担い、発電所向け分散型制御システムは日本エマソンが受注しています。脱石炭の市民のうねりは、日本の石炭技術の輸出にも影響を及ぼしつつあります。
韓国の進む道は?
韓国では、計1000万kWを超える11基の火力発電設備の建設が着工されています。その上にこのDanjin Eco Powerの大型計画が加わると、韓国はさらに石炭火力への依存度を高めることになります。韓国政府は古い発電所を閉鎖すると発表していますが、パリ合意の目指す「2℃未満」にはそれだけでは十分ではないことは明らかです。
韓国の今後の展開にも注目していきたいところです。
関連リンク:
Hunger strike pushes South Korea to defer coal plant plan
Dangjin Eco power station
関連情報:
Korea Joongang Daily “Top 30 firms reduce investments”(2016/7/8)
South Korea Considers Shutdown Of Old Coal Power Plants To Reduce Emissions(2016/6/1)
韓国における大型複合火力発電所設備3連続受注の件(2012.3.22)
エマソンの発電所向けDCS、韓国初の1,000 MW超々臨界圧発電 (唐津火力発電所) を制御(2011.4.4)