2015年9月10日 フランス政府が石炭技術の輸出を止める方針を発表しました。
2014年11月の時点でオランド大統領が石炭火力発電事業への輸出信用を撤廃すると誓約していましたが、今年末にパリで開催されるCOP21に向け、フランス政府はCO2回収貯留装置のついていない全ての石炭発電の新設計画に対する公的な輸出信用を即中止すると正式発表しました。この発表に先立ち、フランス大手重機メーカーであるアルストム社の石炭発電技術輸出への支援を打ち切ることも表明しています。アルストム社は発電用タービンを製造している重機メーカーで、世界のタービン分野では首位を争うほどの大手企業ですが、事業強化を目的としてガスタービン事業をアメリカのGE社に売却する計画につき、9月8日に欧州委員会から売却許可が出たばかりでした。フランスの発電技術輸出市場は小さいながらもアルストム社は輸出事業者としては主要な位置におり、事業の売り上げは収益の5%を占めています。しかし、環境大臣はアルストム社が石炭ではなく再生可能エネルギーへの投資に切り替えるように示唆しました。
フランス政府は大量の温暖化ガスを排出する石炭火力発電の輸出を今後支援しないと発表することで、COP21の開催国として強いメッセージを出す狙いもあったのでしょう。
折しも石炭火力発電所の輸出については、9月17日の経済協力開発機構(OECD)の作業部会で議論がなされたところであり、アメリカやイギリスを始め、石炭火力の輸出を抑制しようと提案する国々が大勢を占めています。しかし、日本はなお、何ら制約はいらないという立場を変えず、石炭輸出を続けようという数少ない国の一つとなっています。
今回のフランスの方針決定で一層その流れは強まりました。このインパクトは小さくないと考えられます。
実際、フランスは2007-2014年の石炭発電所計画に16.4億ドルを支援しており、これは世界の公的輸出信用ランクで5番目に大きな金額でした。
一方、同期間で最大の出資をしているのは日本で168.3億ドル、2番目は韓国で70.9億ドル、3番目が中国の59.3億ドルです。日本の投資額は突出しています。
日本は「公的支援を活用し、需要が高まる新興国の石炭火力発電の効率を高めることが温暖化対策に不可欠」と主張し続けていますが、OECD加盟国の中で唯一の投資国として孤立する日は近いのではないでしょうか。
出典:
France to scrap export credits to Alstom for coal technology – minister
Reuters (September 10, 2015) 英語
Climat : l’exportation des centrales à charbon ne sera plus subventionnée (September 10,2015) Europe1 フランス語
Aides à l’industrie du charbon : “Elles vont être supprimées pour Alstom” france info
(September 10,2015) フランス語
France Ends Export Subsidies for Coal Before Climate Talks 英語
The New York Times (September 10, 2015)
The French government is ending export subsidies for building coal plants abroad, as the country tries to clean up its environmental reputation before hosting landmark U.N. climate talks. 英語
France 24 (September 10, 2015)
France ends coal subsidies for developing countries amid fears of COP 21 failure
EurActiv(September 11, 2015) 英語
参考:
Japan and South Korea top list of biggest coal financiers よりExporting credit for coal
The guardian (June 2015, 2015) 英語
欧州委員会,GEによるアルストムのエネルギー事業の買収について,詳細審査を開始
公正取引委員会(2015年2月23日、欧州委員会 公表)日本語