オーストラリア東南部のニューサウスウェールズ州のボガブライ地域には、豊かな牧草地や、綿の畑、そしてリアド(Leard)州有林がひろがっていた。
ボガブライは乾燥した地域だ。しかし、地下には長年蓄えられた水脈が走り、牛や農作物を育てるのに必要な水分を含んでいる。また、州有林には、Box-Gum Woodlandというユーカリの一種が広がっている。その成長は非常にゆっくりで、長い年月を経て育った森林は、たくさんの在来種のすみかとなっている。調査によれば、396種の在来種が確認され、うち、34種は絶滅危惧種だ。州の絶滅危惧種になっているコアラも生息する。
しかしそのリアド州有林でいま、出光興産の現地企業Idemitsu Australia Resourcesが石炭採掘の拡大事業を進めている。この場所では、すでに現地企業White Havenによって石炭採掘事業が進められている。計画は、今後、そのおよそ3倍の面積を拡大開発するもので、計画通りであればさらに1385haの森林が破壊されるという。事業は、JBIC(国際協力銀行)の援助も受けている。
出光興産の現地企業Idemitsu Australia Resourcesが皆伐した跡
出光興産の現地企業Idemitsu Australia Resourcesは、開発のため失われた森に代わって「オフセット」と称して他地域の森や植林をしているが、森については、生態系環境の違う森でありオフセットにはならず、植林に至っては2、3種の樹木を植林しているのみであった。
現地では住民や農家の人たちなどが連携し、2012年8月よりキャンプをたて、そうした貴重な森林の破壊を食い止めるために、激しい抗議活動を展開している。呼びかけはインターネットを通じて活動家のネットワークや、SNSで呼びかけが広がっている。
現地のNGOスタッフであるジョナサン・モイランは、次のようなコメントを寄せてくれた。
「 出光のボガブライ鉱山のあるリアド森林は、多くの希少種が生息し、コアラの生息地でもある。そしてその周辺には農業地帯がある。干ばつの多いオーストラリアで水資源は貴重であり、住民たちは、鉱山の地下水への影響をたいへん心配している。伐採が行われれば森林は真ん中から破壊され、両端に孤立したエリアが残るだけとなる。私たちは日本の人たちと森林を守るためにともに行動したいと願っている。出光興産にとって石炭は事業の一部であり、再生可能エネルギーへシフトすることは困難ではないはずだ。もし賛同してくれるなら、ぜひ活動のホームページを見たり、銀行へ問い合わせてみたりしてほしい。」
キャンペーンのホームページ ( http://frontlineaction.wordpress.com/about/)
鉱山採掘に反対してキャンプに集う人々
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)ボランティア 岸田ほたる