11月30日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開幕した国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、「パリ協定」で定めた温室効果ガス削減目標への途中経過と今後の気候変動対策に向けた動きをどう進めていくかに焦点を当てた協議が進められることが期待されていましたが、早くも様々なことが起きています。特にエネルギーに関連するここまでの動きを簡単に紹介します。
まず背景には、今年9月に、国連気候変動枠組条約事務が、パリ協定締結後、初めてとなる第1回GST(グローバル・ストックテイク、パリ協定の目標達成に向けた世界全体での実施状況をレビューし、気候変動対策の進捗を評価する仕組み)の成果を発表し、その中で現状の世界全体の排出削減目標はパリ協定の目標に合致しておらず、1.5℃目標に抑えるためのチャンスが急速に狭まっていると指摘しました。これを受け、今回のCOP28では、1.5℃目標を達成するための軌道修正に向けた指針が示されるかに注目が集まっています。世界全体で気候変動対策を強化する必要性に迫られているのです。
(1)開幕初日に「損失と損害基金」の運用についての採択
開会前日の 11 月 29 日に移行委員会の勧告に基づいた損失と損害(ロス&ダメージ)基金の運用ルールに関する決定文書の草案が公表され、初日の30日に議案が採択されるという異例の展開となりました。昨年のCOP27で基金の創設は決まったものの、運用ルールが先送りとなっていたものが、今COP28で決定したことになります。さっそく、議長国のUAEは1億ドル(約148億円)と最大の資金拠出を表明。日本は1000万ドル(約14億8000万円)を拠出するとしています。
(2)再エネ容量3倍、エネルギー効率改善率2倍を目標に
12月2日、首脳会合の協議の結果、2030年までに世界の再生可能エネルギーの設備容量を3倍に、エネルギー効率を2倍にする有志国誓約(プレッジ)に、日本を含む123カ国(12月7日時点)が賛同しました。1.5℃目標の実現には、再生可能エネルギーの拡大とエネルギー効率化が決定的に重要だということが、世界の共通認識になっています。一方、日本政府は、このプレッジがあくまで世界全体で再エネ 3 倍を目指すとしているので、日本の政策を直ちに変える必要はないと考えているようですが、早急なエネルギー転換に向けて日本国内でも再生可能エネルギーの拡大を急速に進めていく必要があります。
(3)原発電設備容量3倍に合意
再エネ3倍への誓約と同日、日本をはじめとする米英仏加など22か国が、世界の原子力発電設備容量を3倍に増加させるという宣言に合意しました。発電設備容量を、2020年比で3倍にする目標を掲げ、小型モジュール炉(SMR)や先進炉の導入拡大、原子力を利用した水素製造なども視野に入れており、市民団体からは「原発は気候変動対策にならない」との批判の声が上がっています。
(4)Coal Transition Accelerator(CTA)に日本は不参加
フランス主導で「Coal Transition Accelerator(CTA)」と呼ばれる新たな外交イニシアチブが立ち上がりました。CTAは、石炭からクリーン・エネルギーへの公正な移行を促進するため、石炭への民間融資を停止し、これまで石炭燃料に依存してきた地域社会を支援し、それらの地域におけるクリーンエネルギーの開発を加速させることに焦点を当てるものです。専門知識を共有し、ベスト・プラクティスや学んだ教訓を通じて新たな政策を立案し、公的・民間資金の新たな供給源を確保することを目指すとしていますが、いまだに石炭への依存度が高い日本は、このイニシアチブへの参加を見送っています。
(5)日本が2つの化石賞を受賞
12月3日、日本は、化石のように古い考え方で気候変動対策の足をひっぱる国に表彰される「化石賞」を初回から受賞。前日の首脳級会合に登壇した岸田首相の演説で、日本が脱炭素に貢献すると称して火力発電への水素・アンモニア混焼を国内外で推進していることはグリーンウォッシュである、というのが受賞の理由です。日本政府は、現時点で実証段階の水素・アンモニア混焼を2030年に20%程度混焼すると計画し、その上、「アジアゼロエミッション共同体(AZEC)」のもとで、アジア諸国にも水素・アンモニア混焼を進めようとしている姿勢が批判されました。
さらに、12月5日、日本は二度目の「化石賞」を受賞しました。「排出削減対策を講じられていない石炭火力の新規建設の終了」を脱炭素の取り組みとして世界にアピールする日本政府の姿勢に対し、再び世界の市民社会から厳しい評価が下されました。
日本は、22年連続で化石賞を受賞することとなりました。
(6)「脱石炭連盟(PPCA)」にアメリカを含め参加国が増加
12月2日には、2017年に発足した国際イニシアチブ「脱石炭連盟(PPCA)」にアメリカが加盟することを発表し、これでG7でPPCAに加盟していない国は日本だけとなりました。さらに12月5日には、PPCAがアメリカを含む9ヶ国が新たにPPCAに加盟したと発表。PPCAは、排出削減対策が講じられていない未対策(Unabated)な石炭火力発電の段階的廃止にコミットする団体です。日本は、岸田首相がスピーチの中で「排出削減対策の講じられていない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了していく」と表明してはいますが、いまだにUnabatedな石炭火力の廃止目標年を設定していません。
今回追加になったのは、米国、アラブ首長国連邦、チェコ共和国、キプロス、ドミニカ共和国、アイスランド、コソボ、マルタ、ノルウェーの9カ国で、加盟国総数は59カ国となっています。
COP28の開催期間は、12月12日までの予定となっています。JBCパートナー団体からも様々なリリースが発信されていますので、そちらもご参照ください。
関連団体からのリリースほか
- FoE Japan:COP28「公正な移行」のゆくえ〜未来へ責任ある行動を選択できるか〜
- 気候ネットワーク:【共同プレスリリース】原発は気候変動対策にならない
- WWF Japan:COP28現地発信:日本が「化石賞」を受賞しました
- WWF Japan:COP28開幕 損失と損害の基金運用について合意!
- グリーンピース: 声明 化石燃料の時代を終わらせる革新的な議論目指せーー11月30日よりドバイでCOP28開幕