ネットゼロを達成するために、そして気候危機の壊滅的ダメージを防ぐために、石炭火力からの脱却は必須なのだということを、科学者や専門家たちが繰り返してきたにもかかわらず、石炭火力はなくならないどころか、常に、世界のどこかで、そして日本国内で、稼働再開や新規の建設計画が登場するなど、むしろ増やそうとする力が大きくなっている感覚すらあります。
石炭火力がないとエネルギーの需要に応えられない、電気の供給が止まれば経済が止まり、死者が出る、再生エネルギーは頼りにならないーー環境負荷の高い石炭火力の使用の継続を正当化するために聞く理屈の一部です。こうしたことは「事実」ではありませんが、リアルな「懸念」として再生エネルギーへのシフトと石炭火力からの脱却を阻んでいます。
実際に、私たちが肌で感じる温度が年々上がり、様々な健康被害や自然災害が起きているにもかかわらず、気候危機への対策を求める声がなかなか結果につながらないのは、現状を維持し、経済効果を優先するために、こうした事実でない情報が流布されているからでもあります。
こんな状況を変えるために唯一できることは、正しい情報を流通させ、不安や懸念を取り除くこと。そして、未来の理想のイメージを構築すること。わかりやすいプラットフォームで、石炭火力の先の未来を描くJBCさんを応援します。
プロフィール
文筆家。1998年からニューヨーク在住。出版社、通信社などを経て2003年に独立。カルチャー、ファッション、政治、社会問題など幅広いジャンルで、インタビュー記事、ルポ、紀行文などを執筆する。著書に『Weの市民革命』(朝日出版社)『真面目にマリファナの話をしよう』(文藝春秋)、『My Little New York Times』(Numabooks)、『ピンヒールははかない』(幻冬舎)、『ヒップな生活革命』(朝日出版社)、翻訳書に『テロリストの息子』(朝日出版社)。2020年12月に『Weの市民革命』を刊行したのをきっかけに、読者とともに立ち上げたSakumag Collectiveを通じて勉強会(Sakumag Study)や出版・制作活動を行う。最新作は、2020年から2021年にかけて書いた文章をまとめた『2020-2021』(wAiwAi)。