欧州投資銀行(EIB)は、2013年7月23日、「欧州投資銀行とエネルギー(EIB and Energy)」と題する新しいエネルギー方針を採択しました。6年ぶりになるこの方針の改定は、より気候変動対策を強化する方向で定められています。
欧州連合(EU)のエネルギーと気候変動対策方針の整合性を10ヶ月間ほど検討した結果、EIBの理事会が採択したエネルギープロジェクト支援に関する新たなガイドラインでは、EUの方針に沿って、EU域内及び域外において再生可能エネルギー、エネルギーの効率化とエネルギーグリッドの支援を強化するとされています。
EIBの支援を受けたベルギー風力発電プロジェクト(出典:EIB)
注目すべきは、この決定は、オバマ大統領、世界銀行に続き、EIBもまた、石炭火力発電所への支援をほとんど中止することを表明したことを意味する点です。
このガイドラインには新たな火力発電所建設支援を決定する際に用いる「排出性能基準(emission performance standard)」が含まれ、わずかな例外を除き、基準を超えたCO2を排出するプロジェクトには支援をしない方針が明示されています。この規定はEU域内だけではなく域外にも適用されます。現在の基準550 g-CO2/kWhでは、すでに最新技術でバイオマス混焼した石炭以外の石炭火力発電は支援の対象になりませんが、EIBは、この基準について2014年には最初の見直しを行い、今後さらに厳しくしていく方針を示しています。
EIBは石炭など特定のエネルギー源を支援しないと断言しているわけではありませんが、この方針により、排出性能基準に基づき、今後エネルギープロジェクトへの支援は再生可能エネルギーと天然ガスが中心に行われることになると考えられます。
EIBの基準にも、先のオバマ大統領や世界銀行の方針と同様の例外があります。他にエネルギー源がない場合や低開発途上国において発電所建設が貧困削減や経済発展に重大な良い影響があると判断された場合です。これらの例外の解釈の幅が広いことを懸念し、理事会は例外についての詳細を今後さらに話し合うとしています。
WWFイギリスやBankwatchなどの団体は、この新たなガイドラインにより温室効果ガス削減へ向けて一歩前進したと認めた上で、さらに厳しい基準が必要だと主張しています。
EIBの支援を受けたスペインの太陽光発電プロジェクト(出典:EIB)
このような排出性能基準の設定は公共銀行では初めてなのでこれからEIBがどれだけ厳しい基準を設定できるか、注目すべきです。
「欧州投資銀行とエネルギー」全文(英語)
http://www.eib.org/attachments/strategies/eib_energy_lending_criteria_en.pdf
EIBのプレスリリース
Bankwatchのリリース
WWFイギリスのリリース
http://www.wwf.org.uk/what_we_do/press_centre/index.cfm?uNewsID=6751
画像出典
http://www.eib.org/infocentre/press/news/stories/2011-april-01/thorntonbank.htm