欧米では、地球温暖化の原因となるCO2の膨大な発生源である石炭火力発電への規制が厳しくなる傾向にありますが、経済発展が進むアジア各国では、石炭の利用が増えており、今後も石炭火力発電への依存が継続すると見越されています。
そのような中、今年12月にパリで開催される気候変動国際会議(COP21)に向け、国際NGO「バンクトラック」は、2015年7月から世界の金融機関に対し石炭産業への投融資撤退を呼びかけるキャンペーン「パリへの誓い(Paris Pledge)」を展開しています。途上国の低炭素化を進めるために、石炭産業へのブラック融資を止めようというわけです。
石炭に関する黒い事実
石炭は温室効果ガス発生の約44%を占める最大の排出源にもかかわらず、世界の火力発電所の建設計画は増加しています。バンクトラックの調査報告(Banking on Coal 2014)によると、2005~2014年4月までの10年間で世界の民間銀行(92行)が石炭関連企業に投融資した推定額は5000億ドル(約60兆円)に達しています。2014年の主要金融機関による石炭関連の投融資総額は1440億ドル(約17兆円)でした。石炭への投融資額が多い銀行のリストの上位には大手金融機関の名前が並んでいますが、日本の金融機関もランクインしており、日本のメガバンクの投融資額も決して小さいものではありません。
順位 |
名前 | 国 |
投資額(€) |
1 | JPモルガン・チェース | アメリカ | 21,520 |
2 | シティ | アメリカ | 20,425 |
3 | ロイヤルバンク・オブ・スコットランド | スコットランド | 18,131 |
4 | バークレイズ | イギリス | 17,844 |
5 | 中国建設銀行 | 中国 | 17,252 |
6 | バンク・オブ・アメリカ | アメリカ | 17,209 |
7 | 中国工商銀行 | 中国 | 16,795 |
8 | モルガン・スタンレー | アメリカ | 15,908 |
9 | BNPパリバ | フランス | 15,599 |
10 | ドイツ銀行 | ドイツ | 15,274 |
〜 | |||
14 | 三菱UFJファイナンシャルグループ | 日本 | 10,396 |
23 | みずほファイナンシャルグループ | 日本 | 5,826 |
26 | 三井住友ファイナンシャルグループ | 日本 | 4,919 |
「パリへの誓い」への署名
9月3日には、バンクトラックが世界で最初にParis Pledgeに署名した6銀行(オランダのASN Bank、ボリビアのBanco Fie、スウェーデンのEkobanken、米カルフォルニアのNew Resource Bank、そしてドイツのEthikbankおよびUmweltbank)を発表しました。これらの6銀行は、石炭採掘や発電への投融資からの撤退を表明しています。金融機関が石炭産業への投融資から撤退し、投資先を低炭素社会に向けた事業に方針転換するということは、重要な意味があります。なぜなら、それにより石炭火力発電所の建設が進められなくなり、エネルギー産業も同じく方針転換を検討せざるを得なくなるのです。世界の先駆けとなった6銀行に続き、日本の銀行を含むさらに多くの金融機関が「パリへの誓い」に署名することが期待されます。
なお、バンクトラックでは、趣旨に賛同する金融機関以外の個人・団体の署名も求めています。署名サイトはこちら。
<参照>
Fair Finance Guide Japan:
<賛同募集> STOP!ブラック融資 銀行のみなさん、パリに向けて脱石炭の誓いを!
BankTrack, Banks and Coal(英語)