2026年2月16日、独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、JERAに対して「価格差に着目した支援」に係る助成金の交付を決定したと公表しました。
この助成金制度は、経済産業大臣の認定を受けた低炭素水素等供給事業者が、事業計画に沿って継続的に供給できるよう、低炭素水素等の価格(基準価格)と既存の化石燃料との価格(参照価格)の差額を補填するものです。
JERAは、米国ルイジアナ州から低炭素アンモニアを日本に輸送し、碧南火力発電所(愛知県碧南市)を受入れ拠点とする供給網を2029年度までに整備する計画を進めています。
同発電所では、すでにアンモニア貯蔵タンクの建設が進められています。2026年1月には、工事の進捗が報道陣に公開されました。直径約60メートル、高さ40メートルの円柱形タンクを4基設置し、計16万トンの液体アンモニアを保管する計画です。まずは2029年度をめどに4号機でアンモニア20%混焼による商用運転を始め、その後、5号機の改修を始め、将来的には50%混焼を目指すとしています。4、5号機それぞれで20%混焼を行う場合、年100万トン程度のアンモニアが必要になると見込まれています。

JERAは、米国ルイジアナ州における製造拠点「Blue Point」で天然ガスを原料としてアンモニアを製造し、製造時に排出されるCO2を回収・貯留(CCS)したブルーアンモニアを液化して日本に輸送する計画を進めています。アンモニアの製造・輸送コストは非常に高いので、購入価格は石炭やLNGよりも大幅に上回ることになります。例えば、2026年2月時点では、米国産ブルーアンモニアは1トン当たり685ドル(CFR USGC)とされており、今後、需要が増えれば価格はさらに上昇する可能性も高い上、コストが低下する見通しは不透明です。
こうした背景から、価格差補填のような制度が不可欠とされているのです。JERAは、ブルーアンモニアを「高付加価値」な原料や燃料として従来の化石燃料よりも高い価格で販売したいと考えているようです。しかし、20%ブルーアンモニア、80%石炭で発電された電力は決して「脱炭素」電力ではありません。
そもそも、アンモニア混焼の技術は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援のもと開発・実証されてきました。そして、商業運転をする際には国の制度による補填を受けなければ採算が取れない。つまり、アンモニア混焼は政府の支援なしには成り立たないのです。
碧南火力発電所の大規模改修工事では、巨大なタンクを建設し、毒性のあるアンモニアを貯蔵、燃料として使用するにも関わらず、環境アセスメントは実施されません。アンモニア20%混焼を行うにあたり、設備の一部は改造する(気化させたアンモニアを噴出させるためのバーナーの追加設置など)ものの、ボイラーやタービン、排ガス処理装置などの主要機器は改造しないとしているためです。報道によれば、アンモニアが漏出した場合には、水に溶けやすいアンモニアの性質を利用してアンモニアを水に吸着させると説明したようですが、近隣住民の健康や環境への影響への配慮を踏まえ、丁寧な説明がなされた様子はありません。
2028年度からは化石燃料の輸入事業者等に対して化石燃料に由来するCO2の量に応じて賦課金を徴収する制度「化石燃料賦課金制度」が始まり、2033年度からは発電事業者に対する「排出量取引制度(GX-ETS)」が動きだします。CO2排出が経済的負担につながるということは、化石燃料の使用を続けることだけでなく、アンモニアの利用もリスクを抱えていると言えるでしょう。
今後、この支援策を続け石炭火力を維持し続けるのか、国民的議論が行われるべきです。

