the problem
問題提起

いまも石炭火力に大きく依存する日本

日本は、残念ながら、現在も石炭火力に大きく依存しています。

発電電力のうち、石炭の割合が全体の約3割を占めています(2019年)。また、エネルギー政策でも、石炭を重要な電源と位置付けています。

それだけでなく、日本では2012年以降にたくさんの石炭火力発電所の新規建設が計画されました。そのために、2020年以降も新しい石炭火力発電所が増え続ける見通しです。

このように、気候変動を悪化させることがわかっている石炭を推進し続けるのは、G7諸国のうち、もはや日本だけです。

日本が石炭にこだわる理由

日本では、これまでたくさんの石炭火力発電所を建設し、国内だけではなく、海外にも輸出展開してきました。高度経済成長期には、石炭を燃料とする工場からの排気ガスで公害問題が深刻化し、有害物質を減らす取り組みも行われてきました。

石炭火力発電技術は、日本の大手のプラントメーカーや電力会社にとって事業の重要な柱の一つとなってきました。「日本の石炭火力発電は世界で最高水準」などとも言われてきました。政府が後押ししてきた経緯もあって、政府も石炭から脱却するという舵を切れないのです。

しかし、どんなに優れた技術であっても、どんなに公害対策を施しても、石炭を燃やす以上、CO2の排出を大量に出してしまうのが、石炭火力発電なのです。

気候変動の深刻な被害が起きることはわかっていたのに、日本は、石炭火力の技術にこだわり続け、気候変動対策で世界に大きく後れをとることになってしまいました。

日本は石炭のほぼすべて輸入している

日本には昔たくさんの炭鉱があり、石炭が採掘されていましたが、今はそのほぼすべてが閉山しています。現在、日本で使われている石炭は、ほぼ100%輸入です。多くはオーストラリアやインドネシアから運ばれてきます。エネルギーの自給率という点からみても、石炭に依存し続けることはリスクが大きいと言えるでしょう。

海外から輸入するということは、海外に多額の燃料調達費用を支払っているということです。石炭は化石燃料の中でも安いとされていますが、価格は安定せず乱高下する傾向がみられますし、この先も燃料費としてずっと支払い続けなければなりません。

一方で、国内の再生可能エネルギーが安くなってきていますので、石炭に依存し続けることが経済的だとは言えなくなってきています。

電力の安定供給の代名詞のように言われてきた石炭ですが、石炭をとりまく世界の状況には大きな変化が起こっており、決して安定しているとは言えません。

この日本の石炭火力依存は、国、そして政治の判断によるものですが、私たち自身が気候変動問題の構造に関心を持ち、政策決定に何らかの形で関われば、CO2排出削減、地球温暖化防止に大きく貢献できるかもしれません。