【ニュース】石炭火力の温存策「容量市場」事実上の補助金に対してNGOが批判


2021年12月22日、電力広域的運営推進機関が容量市場メインオークション約定結果を公表しました。

容量市場とは、4年後の供給力(kW)を確保することを目的として、日本全国の既存の発電設備にあらかじめ対価を支払うしくみとして創設され、供給力の確保は実際に電気を使用する年(実需給年度)の4年前にオークション方式で決められます。今回は二回目のオークションとなります。2020年の約定価格(円/kW)は、上限額に張り付く異常な高値となったことが問題視されたほか、既存の石炭火力発電所や原子力発電所もその対象となることでこれらの設備維持のための実質的な補助金の役割を果たす制度であることから、廃止や見直しを求める声が高まっていました。内閣官房に設置された「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」においても、容量市場の見直しの必要性が指摘されたものの、結果的には制度そのものや構造を見直すことなく今回の二回目のオークションが実施されています。

これに対して、環境などのネットワークである脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会(eシフト)では、プレスリリース「容量市場メインオークション約定結果の公表にあたって 石炭火力・原発の温存に巨費が流れるしくみの撤廃を」を1月12日に公表し、容量市場が抱える問題を指摘しました。特に石炭火力に関しては、今回の応札電源が4098万kWと、全体の4分の1に相当する設備にのぼったことで、約1273億円が供与されることを問題としています。また、このうち、968万kWは非効率石炭火力が該当していることが明らかにされており、国の「非効率石炭火力のフェードアウト」にも不整合であり、石炭火力を維持するインセンティブとなっていることを批判しています。

eシフトでは、容量市場の実際の支払いが2024年度に始まる前に、全面的な見直しも辞さない大改革を行うべきだとし、(1)炭素基準の導入、(2)発送電の所有権分離、(3)戦略的予備力など制度変更を含めた再検討、(4)需要側管理(DR)や蓄電池など将来技術への投資を促す制度設計を提案しています。

石炭火力や原発などが容量市場によって延命されれば、再エネの主力電源化の推進に支障をきたすことになりかねません。また、石炭火力や原発への実質的な補助金となる容量市場の費用が、最終的に再エネ重視の新電力にも応分の支払いが生じるため、再エネを選んでいるユーザーも結果的に電気料金に上乗せされ、その負担を負うことになりかねず、不条理な制度なのです。

参考

プレスリリース「容量市場メインオークション約定結果の公表にあたって 石炭火力・原発の温存に巨費が流れるしくみの撤廃を」